茨城県の技術研究所内に生物多様性の保全に貢献するビオトープを整備、奥村組:導入事例
奥村組は茨城県つくば市大砂の技術研究所内にビオトープを整備した。ビオトープでは、植物の中でも絶滅危惧種の多い水生植物や湿地性植物に対する生育環境の調査と植物の生息地に近い条件での生育で保全の実践を行う。加えて、生物多様性に配慮したビオトープや緑地の設計・施工・維持管理に関する技術も蓄積する。
奥村組は、茨城県つくば市大砂の技術研究所内に、生物多様性の保全に関する研究拠点として、ビオトープを整備したことを2021年11月19日に発表した。
「生育実験池」と「保全池」を設置
国内では、2010年10月に愛知県名古屋市で開催された「生物多様性条約第10回締結国会議(COP10)」で生物多様性の損失を防ぐ20の個別目標を採択したことを契機に、生物多様性を保全するための取り組みが活発に行われるようになった。
さらに、2015年9月に米国で開かれた「国連サミット」で「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択されたことで、自然資本※1の保全への取り組みが重要視されている。加えて、建設業では、工事における動植物の環境保全対策や工場、大規模商業施設などの敷地内における生物多様性に配慮した緑地整備などが求められている。
※1 自然資本:森林、土壌、水、大気、生物資源といった自然によって形成される資本(ストック)のことで、自然資本から生み出される恵み(フロー)は生態系サービスとして捉えられる
そこで、奥村組は、生物多様性の保全に関する研究を発展させるために、技術研究所内に実験用ビオトープを整備した。ビオトープには、実験フィールドとして「生育実験池」と「保全池」を設けた。
生育実験池は、水門による流入水量や排水筒により水位の調整※2が可能で、対象とする植物の生育に適した条件を調査することができる他、5つ設けられており、複数の異なる条件下で植物の生育に関する実験を行える。
※2:水深を0〜30センチに変えられる池が3つ、30〜60センチに可変する池が1つ、60〜90センチに変化可能な池が1つある
保全池は、保全対象とする植物を自生地以外の場所で生育させることを目的とした「代償措置」を実践する場として整備したもので、池内に湿地帯を配置し、つくば市内にある湿地に生息する希少植物の保全に向けた研究※3を行う。また、実験フィールド以外にも、主に浮葉系の希少植物を生育し、展示する「浮葉池」も設置している。
※3:筑波大学や国立科学博物館筑波実験植物園と共同で、つくば市周辺の水生植物保全に関する研究を進めており、その中で、開発などにより失われる懸念がある2カ所の湿地を選定している
今後、奥村組は、ビオトープで希少植物の生育環境を調べるだけでなく、代償措置の実践に取り組むことで、生物多様性の保全に貢献する知見を得るとともに、ビオトープや緑地の設計・施工、維持管理に関する技術を蓄積し、顧客への提案につなげていく。ビオトープを活用して若手職員や地域の子どもたちへの環境教育にも取り組んでいく見通しだ。
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