戸田建設が希釈濃度が従来比約3分の1で済むシールド工用起泡剤を開発、高い生分解性も保有:製品動向
戸田建設は、切羽またはチャンバー内に気泡を注入しながら掘進する工法「気泡シールド工法」の改良を進めている。このほど、希釈濃度が従来品より少なく、水生生物への影響もわずかな特殊起泡剤を気泡シールド工法向けに開発し、安全性の向上やコストカットを実現した。
戸田建設はこのほど、粘性土や礫質土(れきしつど)など多様な土質に対応する気泡シールド工法用の特殊起泡剤「LT2」を開発した。
水生生物への影響も少ない
LT2は、高発泡であるため希釈濃度が従来品の約3分の1で済み、コストカットに貢献する。また、高い安全性を誇るアニオン系活性剤が主成分で、使用量も少量のため環境に優しい。
同社は、LT2の性能を確かめるために、破泡試験や生分解性試験、ヒメダカを実験体に利用した急性毒性試験を行った。破泡試験では、LT2で作成した泡をシリンダーに入れ、空気に触れないよう密閉した状態で、シリンダー下部にたまった液量の経時変化を測定した。従来品と比較して、時間が経過しても泡が割れにくく、気泡が備えた効果の持続性が高いことが分かった。
環境への影響を評価する生分解性試験で、微生物の働きでLT2が分解されやすいことが判明。経済協力開発機構(OECD)が公表するテストガイドラインによれば、試験開始日から28日後に素材の分解度が60%に達すれば易分解性であると判断されるが、テストスタート日から28日経過したLT2の分解度は89%で、高い生分解性を有すことが明らかになった。
水生生物への作用を調べるために、ヒメダカを使用した毒性試験を試み、LT2が水生生物へ及ぼす負荷が小さいことを確認した。96時間後の半数致死濃度(LC50)が、従来品は4〜10mg/Lに対して、LT2は19mg/Lで、優れた安全性を備えていることが明白になった。
福岡市のシールド工事でLT2を導入した際には、砂岩泥岩互層地盤での掘進時に活用すると、従来品と比較して、気泡溶液の使用量が70%になることが発覚した。気泡溶液に使う起泡材の量は、従来品と比べて23%削減できることになるという。
これまで、横須賀市上下水道局 10工区上町・下町バイパス管渠築造工事と、福岡市道路下水道局 八田第15雨水幹線築造工事で採用しており、今後も同社は、さまざまな現場に投入していく考えだ。
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