“酸化被膜”を防ぎ分厚いサビを取る「CoolLaser」新型機、レーザー施工はインフラ老朽化の活路となるか?:施工(2/2 ページ)
橋や鉄塔など全国で老朽化が進む、インフラ構造物の維持修繕工事は、膨大な数に対して人手が圧倒的に不足しているため、社会課題となっている。そうした状況下で、新たな施工法として注目を集めているのが、トヨコーが実用化したレーザー技術を用いてサビや塗膜、塩害のもとになる塩分を除去する「CoolLaser」だ。今般、従来モデルではできなかった厚みのあるサビも除去する高出力の新型機をリリース。同社が設立に関わった産官学も参画する「レーザー施工研究会」では、ルール整備や資格制度の運用も2021年から始まっており、レーザー施工技術はインフラ老朽化が抱える諸問題の解決策となり得るのかを新機種の発表会で探った。
レーザー出力は2倍、施工性は3倍向上
今回、公表したCoolLaser G-19は、国内のレーザーメーカーとともに機器の仕様そのものを見直すことで4つの課題点を解消。その1つ安全面では、照射ヘッドにカバーや2つのスイッチ、正しい手順を踏まないと起動しない安全シーケンス機能を搭載することで施工時の安全を確保した。また、作業体制は、機器の取り回しや安全性も考慮し、工事監督も含めた3人での運用を基本としている。
ルール整備でも、レーザー機器メーカーや大学などに加えて、ゼネコンや地場の修繕工事業者を中心に91社が属し(2021年11月時点)、茂見氏も副会長を務める「レーザー施工研究会」を2019年4月に設立。「レーザー照射処理に関するガイドライン」を策定し、2021年10月からガイドラインに準拠した「レーザー照射処理施工士」と「レーザー照射処理管理技士」の資格講習試験の運用も開始している。
さらに、レーザー工法の国内標準化も、光産業創成大学院大学とともに取り組み、「JIS Z 2358 レーザー照射処理面の除せい(錆)度測定方法」として2019年10月にJISが発行されている。これにより、処理面の除せい度(除去の程度)を客観的に評価できるため、工法の信頼性向上にもつながる。
機器の安定性に関しては、いままでのレーザーを非連続に照射する「パルスレーザー」ではなく、連続してレーザー照射する「連続波(CW)レーザー」に変更することで、安定して高い出力が維持できるようにした。
一番の特長となっている照射出力は、世界でも高水準だった現行機の3kWに対して6kWと2倍、施工スピードでは3〜4倍に向上した。橋梁の手ごわい100μmのサビや300μmの塗膜厚も除去でき、高出力ながらレーザー処理後の酸化被膜の形成も抑制する。仕組みとしては、鉄鋼にレーザーが吸収されて鉄が温まるよりも早く、表面の付着物を瞬時に溶融、蒸発、飛散させることで、鉄自体の温度上昇を抑えて酸化被膜ができにくくなる独自技術を用いている。
CoolLaser G-19の市場への供給については、「これまでは装置の提供はしていなかったが、性能に確証が持てたため、2022年春からレンタルでの提供を始める。今後は、光が届きにくい支承部など狭隘(きょうあい)箇所などにも対応するため、引き続き土木研究所の革新的社会資本整備研究開発推進事業に基づき共同研究を進める。さらに、橋梁以外にも鉄塔、船舶などの海事分野構造物、大型プラントの構内設備などにも適用範囲を広げていくつもり。ただ、各分野それぞれの塗装仕様や業界・会社の慣習があるため、ニーズに合わせて最適化できるようにブラッシュアップしていく」と展望を語った。
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