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“酸化被膜”を防ぎ分厚いサビを取る「CoolLaser」新型機、レーザー施工はインフラ老朽化の活路となるか?施工(1/2 ページ)

橋や鉄塔など全国で老朽化が進む、インフラ構造物の維持修繕工事は、膨大な数に対して人手が圧倒的に不足しているため、社会課題となっている。そうした状況下で、新たな施工法として注目を集めているのが、トヨコーが実用化したレーザー技術を用いてサビや塗膜、塩害のもとになる塩分を除去する「CoolLaser」だ。今般、従来モデルではできなかった厚みのあるサビも除去する高出力の新型機をリリース。同社が設立に関わった産官学も参画する「レーザー施工研究会」では、ルール整備や資格制度の運用も2021年から始まっており、レーザー施工技術はインフラ老朽化が抱える諸問題の解決策となり得るのかを新機種の発表会で探った。

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 トヨコーは2021年11月12日、高出力レーザーでインフラ構造物のサビや塗膜などの付着物を除去するレーザー装置「CoolLaser(クーレーザー)」を改良し、新たな実用化モデルとして「CoolLaser G-19」を発表した。

 新型機のCoolLaser G-19は、世界最高クラスを謳(うた)う6kW(キロワット)の高出力を備え、従来機では除去が困難とされていた100μm(マイクロメートル)のサビや300μmを超える塗膜を取り除くことができるようになった。

インフラを取り巻く現状と将来懸念される課題

 1996年創業のトヨコーは、アスベストを含み水洗いができない工場のスレート屋根に3層の特殊樹脂を吹き付けて防水・断熱・補強などを施す「SOSEI工法」、afterコロナの地方創生も見据えたインフラや建物の「景観デザイン提案」、レーザーで橋梁(きょうりょう)や鉄塔などのサビ/塗膜/有害物質を除去する「CoolLaser」の3つを柱に事業展開。現在はCFC 豊澤一晃氏とCRC 茂見憲治郎氏の2トップ体制で、直近の2021年3月期には売上高9億2100万円にまで業容を拡大させている。

 2019年からCoolLaser事業を管掌して以降、パートナー企業とのアライアンス提携だけでなく、「レーザー施工研究会」の立ち上げや土木研究所との工法検証など社会実装に向けたルール策定にも注力する代表取締役 CRCの茂見氏は、CoolLaser事業の背景には社会インフラが抱える諸問題があると話す。

 「今後、(竣工から)50年を超える老朽化したインフラ構造物が全国に増えてくる。しかし、担い手の減少や産業廃棄物の排出といった課題があり、コスト面でも、現行の施工方法では橋の入り組んだ箇所には対応できないため、そのままにするしかなく、いずれは膨大な修繕工事または建て替えの費用に跳ね返ってしまう」。


トヨコー 代表取締役 CRC 茂見憲治郎氏

 国土交通省 道路局の調査データを例にとれば、全国72万橋のうち、7割以上の約51万橋が市町村道に架かり、建設後50年を経過した割合は、建設年度が不明な約23万橋を除いても、2029年には52%にも上る。財源が限られる市町村管轄の橋梁が老朽化の大半を占めるなれば、不足するコストや人手をどう代替するかは早急に手を打たなくてはならない状況にある。「公共工事の予算では、これからは全面改修するのではなく、重要な部分に絞り、コストを抑えつつ直していく方針となっていくのではないか」(茂見氏)。

 そのため、2008年からトヨコーが開発に乗り出したCoolLaserは、レーザーで老朽化した箇所のみを重点的に直していくことを目的とし、同時に入職者の減少を改善すべく、「3K(キツイ、キタナイ、キケン)の現場を3C(クール、クリーン、クリエイティブ)の現場へと変える」という作業環境の変革を掲げている。

 操作方法も、砂や鋼製の小球を吹き付けるショットブラストや化学薬品で塗装を溶かす工法などに比べ、茂見氏が「畑違いの自分でも苦も無く施工できた」と話すように、専門知識が要らず誰にでも扱いやすい製品設計となっている。

 除去対象は、サビや塗装だけに限らず、塩にも有効で、内部に塩分が残留していると腐食が進行してしまう塩害を防ぎ、構造物の長寿命化にもつながる。また、環境面でも、光の力を使うことで、他工法のように2次廃棄物が発生しないため、ブラスト比で99%以上の廃棄物削減が実現する。

 機器の構成は、4トン車に積載できる発振器、チラー、コンプレッサーの「システム装置」と、施工者が手に持つ軽量の照射ヘッドを100メートルの光ファイバーでつなぎ、車が近づけない橋と橋のジョイント部や橋脚などの除去作業にも対応させている。


「CoolLaser」のメカニズム 提供:トヨコー

施工前の塩分測定結果 提供:トヨコー

レーザー照射後の塩分測定結果 提供:トヨコー

 これまでにCoolLaserは数回のバージョンアップを経て、2019年には屋外での稼働が可能となり、橋梁をメインに20案件以上の施工実績があり、最近では大手キャリアの通信鉄塔でもトライアルを進めている。

 しかし、レーザーを屋外工事で使う前例が世界的もレアケースで、施工時の安全確保や安全に施工するためのルール整備、粉じんが舞う工事現場でのマシンの安定性、分厚いサビに対する除去能力、レーザー照射後に塗装耐久性へ悪影響を与える酸化被膜への対応がまだハードルとして残っており、本格的な普及には至ってはいなかった。

「CoolLaser G-19」のレーザー照射デモ

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