トンネル1スパンの半断面をカバーする作業床を確保可能なシステム足場を開発、大林組:導入事例
大林組は、トンネルの補修と補強工事における交通規制期間の短縮を目的に、トラック積載型システム足場「フラップリフト」を開発し、東日本高速道路発注のトンネル工事に適用した。
大林組は、トンネルの補修と補強工事における交通規制期間の短縮を目的に、トラック積載型システム足場「フラップリフト」を開発したことを2021年10月4日に発表した。
2車線トンネルを補修する場合はこれまでと比べて施工速度が1.5倍
近年、社会インフラの老朽化が社会問題となっており、国内の道路トンネルでも、約半数が今後10年間で建設から50年を経過することから、リニューアルが急務となっている。また、従来、トンネル覆工コンクリートの補修と補強工事の足場として使用されている高所作業車は、1台当たりの作業床面積が3×1.5メートル程度と狭いため、作業するエリアに合わせて頻繁に移動しなければならず、移動や再設置に時間がかかっていた。
とくに、近年一般的な工法となっている「繊維シート接着工法※1」では、長尺シートを覆工コンクリートに貼り付ける際に、作業範囲が狭いため補修と補強の工事に時間を要し、交通規制期間が長期化していた。さらに、品質点検・確認用の高所作業車が、補修・補強用の高所作業車と一カ所に集中するため、品質管理者の移動が制限され、品質点検・確認作業の遅延や不良箇所の見逃しが発生するリスクがあった。
※1 繊維シート接着工法:既存のコンクリート構造物表面に繊維(炭素繊維・アラミド繊維など)シートを専用の樹脂で貼り付けることで、鋼板補強と同等以上の補強効果が得られる。また、鋼板より軽く腐食しにくい特徴がある
そこで、大林組は、トンネル1スパン分(10.5メートル)の半断面に相当する作業床を確保するシステム足場としてフラップリフトを開発した。フラップリフトは、15トンの荷物を積める大型トラックに搭載可能で、トラック荷台上で足場を展開する。トラックの荷台上に設置することで、速やかな足場の展開や格納、搬出入を実現し、夜間の1車線規制の作業にも応じられる。足場は、油圧装置により補修場所に合わせて最適な高さと位置に調整でき、作業効率をアップする。
具体的には、1台でトンネル1スパン分の半断面をカバーするため、足場の移動と再設置の時間を短縮する。そして、広い足場上を作業員が自在に動け、アーチ状の壁への接近を上、中、下の3段足場でカバーするため、作業効率を高められる。2車線トンネルを補修する場合は、通常の高所作業車を使用するケースと比較し、補修延長100メートル当たり交通規制日数を80日から52日に短縮し、施工速度が1.5倍となる。
そして、トンネル1スパン分を連続したシームレスな構造に仕上げることが容易となる他、施工前の調査・点検および施工完了時の再点検・補修も簡単になり、品質が向上する。加えて、フラップリフト全体を天井までシートで囲うことで、作業箇所の温度と湿度の制御が可能となり、品質管理基準で定められた材料の品質を確保したまま1スパン分の施工を行える。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 高速道路の点検で生じるリスクを体験できる新たなVR、アクティオ
アクティオは、高速道路の点検で生じるリスクを体験できるVR「Safety Training System VR of AKTIO」を開発した。 - リコーの一般車用トンネル点検システムが「NETIS」に登録
リコーが開発した一般車両に搭載するタイプのトンネル点検システムが、国土交通省の新技術情報提供システム「NETIS」に登録された。新システムは、車でトンネル内を走るだけで、覆工面の状態を計測でき、調書作成などの業務プロセスも自動化される。 - 熊谷組が小断面トンネル向けの積み込みシステムを開発、遠隔操作に対応
熊谷組は、積み込み機や鋼車積込搬送機(トレンローダ)、鋼車運搬機で構成される小断面トンネル向け積み込みシステムを開発した。システムの操作は、カメラやモニター、対象物との距離を色で見える化する「遠近距離可視化ガイダンスシステム」を用いて、遠隔で行える。 - マルチ測定車「RIM」、路面の水たまり箇所や変状箇所を可視化
大林道路は、i-Constructionをはじめ、さまざま場面で3Dモデルが活用されている現状を踏まえ、路面やトンネル、橋梁の点群データが取得できるマルチ測定車「RIM」を開発した。水たまり箇所を特定する機能や道路の凹凸を見える化する技術「コンター」を搭載しており、さまざまな用途に使えることから業界でも注目されている。