リコーの一般車用トンネル点検システムが「NETIS」に登録:維持検査・点検
リコーが開発した一般車両に搭載するタイプのトンネル点検システムが、国土交通省の新技術情報提供システム「NETIS」に登録された。新システムは、車でトンネル内を走るだけで、覆工面の状態を計測でき、調書作成などの業務プロセスも自動化される。
リコーは2019年11月12日、専用車両ではなくても、一般車両に搭載できる独自のトンネル点検システムが、国土交通省の新技術情報提供システム「NETIS」に登録されたことを公表した。
被写界深度拡大カメラとライン照明での撮影
日本国内には約1万本のトンネルがあり、老朽化に伴う安全管理は社会課題化されている。2014年には国土交通省から「道路トンネル定期点検要領」が発表され、これに基づき、全国で定期点検が進められている。トンネルの点検を行う場合、従来方法では交通規制をして、特殊な高所作業車を導入し、目視で行うため、作業員に落下事故や交通事故などの危険がつきまとうことに加え、多くの人員や時間が割かれていた。
リコーの開発したシステムは、複数台の被写界深度拡大カメラと照明が一体となった計測システムで、特殊に改造した車両でなくても、一般車両に搭載して運用できる。現場ではわずかな調整のみで、トンネル内を往復で走行することにより、全覆工面を撮影。
使用する被写界深度拡大カメラは、通常のカメラに比べ被写界深度が4〜5倍になるため、薄暗いトンネル履工面の画像も、解像度と明るさを犠牲にせず、鮮明に撮影することが可能だ。照明は、プロジェクタ照明をライン状になるようにビーム整形を行い、ライン状に集光をさせることで、撮影箇所を最適に照らす。
撮影した画像は、覆工面の形状に応じた画像処理をして、高精度な展開画像が自動作成される。画像からは、0.3ミリクラスのひび割れやねじのゆるみも確認でき、変状部のスケッチや写真撮影の工数が減らせ、コストダウンも図れる。
また、点検調書作成を支援するソフトウェアによって、点検結果の書類は所定のフォーマットで自動生成。点検結果を蓄積していくことで、過去のデータと比較すれば、次回以降の点検工数の効率化にもつながる。
システム自体は、コンパクトな構成のため、計測システムだけを取り外して別途、輸送することもできるという。
リコーでは、トンネル点検システムに先立ち、2019年8月には社会インフラ向け点検サービス「リコー 路面モニタリングサービス」の提供を開始している。独自の光学技術を生かし、さまざまな社会インフラの維持管理の課題を解決する新技術の一つとして、今回はトンネルにその範囲を広げるに至った。
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