GISや点群などAI発展のカギは“データ利活用” 首都高や阪神高速の事例【土木×AI第6回】:“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(6)(2/2 ページ)
連載第6回は、AI発展のカギとなる多種多様なデータ活用の在り方に関して、首都高や阪神高速などの事例をもとに解説していきます。
インフラ構造物をサイバー空間に再現する試み
近年は、社会インフラの維持管理やマネジメントへのデータ利活用も関心を集めています。下図は、多様なデータを統合化し、利活用する枠組みの例です。インフラマネジメントでは、下図の最左列に記されたように多種多様のデータが扱われています。図の右に向かうに連れて、オープンデータなどの外部データを含めて、相互に関連付けながら統合化し、蓄積・管理・活用していく様子が示されています。管理主体ごとに異なるデータ形式や表現に対応しつつ、目的に応じた分析や可視化を行うことで、下図最右列のような各種業務への利用へつなげることができます。
首都高速道路では、GISに紐(ひも)づけられた構造物の諸元や図面データ、施工記録、点検・補修記録などの基本情報に、3次元点群データを連携させたインフラプラットフォームを構築しています。それにより、3次元空間での構造物の現況確認、損傷や変状の把握に加え、現況図面の作成や設計・施工に関わるシミュレーションなどを行うことが可能となっています。下図は、点群データによる3次元空間上で、建設機械や点検機材などの現場配置検討のシミュレーションを行っている様子です。
また、阪神高速道路は、現実世界にあるさまざまなデータをロボットやセンサー技術で収集・蓄積し、サイバー空間でAIや大規模データ処理技術を駆使して分析・知識化を行い、人が最適な意思決定を行っていく「サイバーインフラマネジメント」という概念を掲げています※6。そこでは、現実空間にある橋やトンネルといった道路構造物の竣工図や設計計算書から、地盤モデルから構造モデルまで、実物と同じ性質・挙動を示すモデルをサイバー空間に再現する「デジタルツイン」と呼ばれる試みを進めています。下図は、デジタルツインモデルの各部材に、劣化・損傷などの情報を見える化した例です。
ここ最近は、国内の建設業界でBIM/CIMの進展とも相まって、地図やGISから3次元のモデルへとインフラのデータのプラットフォームは拡張されてきています。将来はプラットフォームの発展に伴って、AIの応用も進化し、DXを牽(けん)引していくことが期待されます。
★連載バックナンバー:
『“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト』
■第5回:道路画像のAI活用で何が分かるか、路面変状だけでなく冠水状態やスタッドレス装着も自動判定
■第4回:コンクリ構造物のひび割れAI点検で精度を上げるには?段階的手法の有効性
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- BIM×AR/MR:mixpaceに「BIM 360」との連携機能、大容量BIMモデルでもそのままAR変換
SB C&Sとホロラボは、BIMモデルをAR/MRデータに変換するサービス「mixpace」に、BIM 360との連携機能を追加した。双方の連携により、BIM 360上に保存されているRevitで作成した大型サイズのBIMモデルを、以前のように、その都度ダウンロードしてアップロードすることなく、mixpace上だけでAR/VR変換までが完結する。 - 新工法:施工後の下地コンクリートの視認性を確保した「タフネスコート工法」を開発、清水建設
清水建設は、2021年6月に土木学会の技術評価を取得した「タフネスコート工法」の新バージョンとして、施工後に下地コンクリートの状態を確かめられる「タフネスコート工法クリア」を開発した。同社は今後、タフネスコートシリーズの現場適用に注力し、コンクリート構造物の維持管理を効率化していく。 - 産業動向:「平均年間給与額は製造業よりも建設業が高い」、給与額の実態を分析
建設HRは、国内における建設業の人材市場動向をまとめた2021年10月分のマンスリーレポートを公表した。今月のトピックスでは、建設業での給与額の実態を年齢層別や職種別に分析している。 - 維持管理:画像処理によるひび割れ点検支援システム「VIS&TFC」を発売
日本システムウエアと日本工営は、東京理科大学理工学部土木工学科小島研究室の特許を利用し、ひび割れ点検支援システム「VIS&TFC」を開発し、2021年10月1日から販売を開始した。画像処理により、ひび割れ検査作業の効率化と精度向上を実現する。 - 建機自動化:複数バックホウの土砂積み込みを自動化、大林組が人手と同等の作業性を実証
大林組、NEC、大裕は、複数台のバックホウによる工事現場の土砂積み込みから搬出までを自動化し、1人のオペレーターだけが監視するだけで済む「バックホウ自律運転システム」の実証を行った。 - ロボット:四足歩行ロボット「Spot」の自動巡回と遠隔操作で現場実証、10%の負担軽減で“残業規制”の有効策に
竹中工務店と竹中土木は、四足歩行ロボット「Spot」を用いた現場監視の有効性を建築と土木の実現場で検証した。両社は、Spotによる現場の自動巡回が、2024年に建設業に適用される時間外労働の上限規制への有効な対応策になり得ると期待を寄せており、今後は搭載機器のユニット化やOS開発などを進める。