複数バックホウの土砂積み込みを自動化、大林組が人手と同等の作業性を実証:建機自動化
大林組、NEC、大裕は、複数台のバックホウによる工事現場の土砂積み込みから搬出までを自動化し、1人のオペレーターだけが監視するだけで済む「バックホウ自律運転システム」の実証を行った。
大林組、NEC、大裕は2021年9月13日、共同開発した「バックホウ自律運転システム」をトンネル工事現場の土砂積み込み搬出に適用する実証実験を行ったと公表した。
1人のオペレーターが複数台のバックホウを遠隔地から監視
建設業における生産性向上、働き方改革を実現するにあたっては、ICTを活用した施工や生産プロセスそのものの変革が重要とされ、なかでもバックホウは、地盤の造成やトンネル掘削といった土木工事、大規模建築物の地下掘削における土砂の積み込みなど、施工時の膨大な作業に用いるため、自律化することが近道と見なされている。
大林組、NEC、大裕の3社は先立つこと2019年に、センシング技術とそれらを統合管理する「ネットワークドコントロールシステム」、NECの「適応予測制御技術」、大林組と大裕のメーカーや機種を問わない汎用の遠隔操縦装置「サロゲート」を活用したバックホウの自律運転システムを開発した。
今般、建設現場に適用するための機能を拡張し、大林組が施工するトンネル現場で、複数台の異なるメーカーのバックホウが、土砂ピット内に堆積した土砂を掘削し、ダンプトラックに積み込むまでの一連の作業を自律運転で行った。自律運転中は、遠隔地から1人のオペレーターで監視し、いつでも遠隔操縦に切り替えられる体制を整備することで、現場の省人化も実現した。
自律運転は、ダンプトラックの運転手が現場に備えつけたボタンを押すことで開始し、一定量の積み込みが完了すると自動で停止するため、人手による作業が発生しない。自律運転中、オペレーターは、遠隔地に設置したモニターで、施工ヤード各所に配置した複数台のカメラから俯瞰映像やバックホウの姿勢や状態、掘削エリアとダンプトラックへ積み込んだ土砂形状などのセンシング情報をリアルタイムでモニタリングする。遠隔操縦に切り替えると、現場のカメラ映像や作業音などをもとにバックホウを操作することもできる。
また、効率の良い掘削作業を実施するためには、バックホウが掘削しやすい位置に土砂をかき寄せ、安定した土砂量を正確に掘削できることが欠かせない。加えて、ダンプトラックで搬出・運搬する際は、過積載の抑制や運搬中に崩れ落ちないように適切な荷姿を形成する必要もある。
今回の現場適用では、従来は人手で行っていた作業を自律運転に置き換えるため、センサーを活用してピット内の土砂形状をもとに、土砂を最適な位置にかき寄せる機能をはじめ、掘削したバケット内の土砂体積を推定する機能を制御に組み込むことで、搬出時の総重量を目標値の98〜100%の精度で積載することが可能になった。
さらに、バックホウの動作を高精度に制御することで、正確な掘削作業と公道運搬に適した荷姿に整形するなど、単に同じ動作を反復するのではなく、人手と同等の作業を実現した。ベッセル(荷台)の形状を深度カメラで認識し、積み込みを制御することで、あらゆる形状のダンプトラックに適応できるという。
自律運転システムは、実際の建設現場に導入可能な実用性と機能性が評価され、国際学会2021 IEEE 17th International Conference on Automation Science and Engineering(CASE)に採択されている。今後は、施工現場への実適用だけでなく、台数を増加させることでさらなる生産性向上、屋外環境への対応、他の建設重機との連携といった技術の拡張に取り組むとしている。
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