ローカル5Gでトンネル坑内のホイールローダ遠隔操作に成功、時速20km走行と微妙なバケット操作を実証:山岳トンネル工事(2/2 ページ)
西松建設は、山岳トンネル工事を対象にした無人化施工システム「Tunnel RemOS(トンネルリモス)」の構築を進めており、その一環でローカル5Gを活用したホイールローダの遠隔操作システムの早期実用化に向け、実施工での検証も行った。
人が重機に接近した場合は、AIが認識して緊急停止
安全走行管理システムは、遠隔操作時の安全走行を確保するため、ホイールローダの運転を自動的に緊急停止させるシステムを備えている。緊急停止は、人の異常接近をAIが認識した場合や無線にトラブルが発生した際に自動的に作動するが、コックピットや携帯式のスイッチから手動で緊急停止を作動させることにも対応している。また、ホイールローダ周辺の安全状況や坑内設備との接近は、遠隔操作室に設置された全周囲モニターによって確認することもできる。
実証実験は、国土交通省 北海道開発局 小樽開発建設部発注の「一般国道5号 仁木町外 新稲穂トンネルR側仁木工区工事」で、ホイールローダの坑内走行や掘削ずりの運搬、クラッシャーへの投入といった実施工と同様の作業を遠隔操作で実施した。
今回の実証実験で、運転操作に大きく影響するような映像伝送遅延や通信上の不具合は生じず、狭隘(きょうあい)な坑内でも有人運転に近い高速走行(時速20キロ程度)や掘削ずりの積み込み、クラッシャー投入時の微妙なバケット操作を遠隔で可能なことが証明された。
ローカル5G通信は、多数同時接続や大容量通信を利用してトンネル掘削に使用する複数重機の遠隔同時施工への応用も期待されており、今回の開発を足掛かりに、西松建設が目指す山岳トンネル施工の無人化施工システム「Tunnel RemOS(トンネルリモス)」の実現に向けて、取り組みを加速させていく。
なお、ホイールローダ遠隔操縦システムの技術は、官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)予算を活用して国土交通省が実施する「令和元年度 建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」のうち、「第5世代移動通信システム等を活用して土木又は建築工事における施工の労働生産性の向上を図る技術」の1つに選定されている。
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