大林組が光切断法を用いた山岳トンネル断面計測システムを開発、作業員を4分の1に削減:山岳トンネル工事
東京大学大学院工学系研究科 研究科長 染谷隆夫氏と大林組は、光切断法を用いた山岳トンネル断面計測システムを開発した。今後は、施工中の出来形管理や維持管理に活用するために、複数の計測断面を3次元断面で統合する技術の確立を図る。
東京大学大学院工学系研究科 研究科長 染谷隆夫氏と大林組は、光切断法を用いた山岳トンネル断面計測システムを開発したことを2021年8月30日に発表した。
360度の方向に照射する「リングレーザ」と魚眼カメラを採用
国土交通省の土木工事施工管理基準では、覆工コンクリートの出来形管理は、トンネル延長40メートルごとに1断面の幅と高さを計測することとしている。さらに、一般的な道路トンネルの大きさ(幅と高さ)は約6〜10メートルで、出来形管理の計測点は、1断面当たり左右と天井部の3点が必要だ。そして、従来の計測方法では、高所作業車とはしごを用いて、メジャーや検測棒などで行うため、手間と時間がかかり、作業の効率化が課題だった。
そこで、東京大学の染谷氏と大林組は光切断法を用いた山岳トンネル断面計測システムを開発した。光切断法は、直線状に光が照射される「ラインレーザ」とカメラを使用し、レーザ光の進行方向とカメラの光線ベクトルにおける三角測量原理により3次元の計測を行う。
光切断法をトンネル断面でも適用できるように、今回のシステムでは、360度の方向に照射する「リングレーザ」と、トンネル断面上の照射光を一度に撮れる魚眼カメラを採用し、1人での測定を可能として、省人化と生産性を高めた。
新システムの使用手順は、まず測定したい断面の路盤上にシステムを設置して、レーザ光を照射し、魚眼カメラで撮影し計測する。レーザ光をトンネルに照射すると断面が輪切り状に見える化されるので、どこを計測しているのかを目視で確かめられる。このため、計測者以外からも測定箇所が一目で分かる。
新システムの利点は、従来のような高所作業車やはしごによる業務を不要とし、これまでは最低4人必要だった計測作業を1人行え、人員を4分の1に減らせる点。
東京大学の染谷氏と大林組は、2020年に山岳トンネルの施工現場で新システムの実証実験を実施し、光切断法によるトンネル断面計測に成功した。今後は、施工中の出来形管理や維持管理に活用するために、複数の計測断面を3次元断面で統合する技術の確立を図る。
なお、光切断法を用いた山岳トンネル断面計測システムの開発は、国土交通省関東地方整備局「技術シーズマッチング※1」の支援で行った。
※1 技術シーズマッチング:国土交通省がICTの全面的な活用の導入により建設生産システムの生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指す取り組みである「i-Construction」の推進のため、主に建設分野以外の最新技術(IoT、ロボット、AIなど)を建設現場に取り入れることを目的として行っているマッチング
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