戸田建設らが覆工セントルのレール移動作業を完全自動化するシステムを開発:山岳トンネル工事
戸田建設は、岐阜工業と共同で、覆工セントルのレール移動を自動化する「Rail Walker SystemII」を開発した。今回のシステムは、従来バックホウなどの建設機械と複数の作業員との混在作業で行っていた覆工セントルのレール移動作業を、1人の作業員によるボタン操作だけで自動化するもの。さらに、先行して開発を行った作業台車のレール移動作業を自動化する急曲線対応型自動レール移動システム「Rail Walker System」を長い覆工セントルのレール移動にも適用可能とした。
戸田建設は、岐阜工業と共同で、覆工セントルのレール移動を自動化する「Rail Walker SystemII」を開発し、Rail Walker SystemIIの概要を2021年8月24日に発表した。
防水工、鉄筋工、覆工コンクリート工の一連作業でレール移動作業を全自動化
Rail Walker SystemIIは、油圧シリンダ式特殊アウトリガー、自走装置付き特殊車輪、ラックアンドピニオン方式※1によるレール前送り装置、油圧シリンダ式横移動装置、架台付き特殊レールで構成されている。
※1 ラックアンドピニオン方式:ラックアンドピニオン(rack and pinion)とは歯車の一種で、回転力を直線の動きに変換する方式。円形歯車(ピニオン)と、平板状の棒に歯がつけられたラックを組み合わせたもの。ピニオンに回転力を加えると、ラックが歯すじ設定された末端まで水平方向に動く
使用方法は、特殊アウトリガーで覆工セントルと特殊レールを上昇させ、レール前送り装置でレールをセントル進行方向に移動する。トンネル線形が曲線の場合は曲線形状に合わせて横移動装置によりレール前後で左右の移動調整を行う。
新システムは、採用することで、重機類を使用することなく、1人の作業員によるコントローラーを用いた遠隔遠隔でレール前進と横移動を行えるため、ずり搬出中で通過車両の往来が激しい時でもレールを安全に移動させられる。
加えて、先に開発した「Rail Walker System」と新システムを併用することで、防水工、鉄筋工、覆工コンクリート工の一連作業で、レール移動作業が全自動で行えるようになり、トンネル掘削作業やインバートコンクリート作業時の通行車両を停車させることなく、トンネル全作業の効率化と安全性の向上が図れる。
今後、戸田建設では、Rail Walker SystemIIを現在施工中のトンネル現場で利用する予定だ。また、新システムは、特殊ジャッキを用いたラックアンドピニオン方式を採用しているが、幅広い需要に対応するため、より安価な汎用品の油圧ジャッキとウインチを使用したけん引方式の移動システムも開発していく。
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