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建設業の労働生産性を考える「全産業平均を下回り製造業との差が拡大」建設業の人材動向レポート(35)(2/2 ページ)

本連載では、建設HR 編集部(旧ヒューマンタッチ総研)が独自に調査した建設業における人材動向について、さまざまな観点で毎月レポートを発表している。今回は、内閣府の「国民経済計算」を基礎資料に、建設業の労働生産性について考察している。

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製造業以外は労働生産性の改善はあまり進んでいない

 主要産業別に労働生産性の改善度合いを比較するために、2002年の労働生産性を100とした指数で、2019年の労働生産性を比較してみると、「製造業」が144で飛びぬけて高く、次に「専門・科学技術、業務支援サービス業」が114、「卸売り・小売業」が113、「建設業」と「金融・保険業」がともに109となっている(図表3)。最も労働生産性の改善が進んでいないのは、「宿泊・飲食サービス業」の90、次いで「情報通信業」の95となっている。このように、労働生産性の改善は製造業以外ではあまり進んでおらず、建設業も含めて多くの産業で重大な課題であると考えられる。


【図表3 2019年における労働生産性指数の比較(2002年を100とした指数)】 出典:内閣府「国民経済計算」より建設HR 編集部が作成

1人あたり年間労働時間の短縮が進まないことが建設業における大きな課題

 建設業の労働生産性の改善が進まない要因を探るために、労働生産性を決める3つの要素である「実質国内総生産額」「就業者数」「1人あたり年間労働時間」の2002年比での推移をみると、2012年時点で実質国内総生産は71.4%に減少しているのに対して、就業者数は80.8%にまでしか減少しておらず、建設市場の縮小に就業者数の減少が追い付かず、人員過剰の状態になっていることが分かる(図表4)。

 また、2012年における1人あたりの年間労働時間数は101.2%と増加している。このような人員過剰の状態の中で、1人あたりの労働時間も増加してしまっている結果として、労働生産性の低下を招いている。2019年は、実質国内総生産は84.2%に減少、就業者数は77.8%にまで減り、人員過剰ではなくなっているが、1人あたりの労働時間は99.3%とほとんど変わっておらず、建設業で労働生産性の向上が進まない大きな要因は、労働時間の短縮が進まないところにあると考えられる。


【図表4 建設業の実質国内総生産、就業者数、年間労働時間の2002年比の推移】 出典:内閣府「国民経済計算」より建設HR 編集部が作成

考察

 2019年の建設業の実質国内総生産額は、2002年比で84.2%、就業者数は同77.8%であり、実質国内総生産額の減少以上に就業者数は減っているが、1人あたりの年間労働時間が同99.3%とほとんど変わっていないことから、労働生産性に大きな改善はみられていない。今後、建設業のさらなる成長のためには、1人あたりの労働時間を短縮することが重要な課題になると考えられる。

 土木分野ではCIM (Construction Information Modeling) 、建築分野ではBIM(Building Information Modeling)の導入を基盤として、建設の各プロセスにおいてICTやロボット・人工知能の活用が進展している今こそ、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation:DX)の実践による労働生産性の大幅な向上を実現する好機である。

著者Profile

建設HR

建設HRは、総合人材サービス事業を行うヒューマンリソシアが運営する「建設人事のお悩みに寄りそう」をコンセプトに、建設業界人のお困りごとに寄りそい、ともに向き合い、ときには半歩先の未来を提案するHRビジネス・パートナーとして、さまざまな記事などを発信するメディア。

同編集部では、建設業界に特化した人材動向/市場動向/未来予測などの調査・分析に関する独自調査レポートやマンスリーレポート、建設ICTの最新ソリューションを紹介するセミナーなど、建設業界に関わるさまざまな情報発信も行っている。

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