出来形計測データの改ざんを不可能にするブロックチェーンを開発、実用化の研究を開始:ICT
東京大学大学院工学系研究科は、2018年10月に設立した「i-Constructionシステム学寄付講座」による活動の一環として、清水建設と共同で、「ブロックチェーンを活用した出来形情報管理システム」を開発した。
清水建設は、東京大学大学院工学系研究科と共同で、建設生産プロセスの合理化を目的に共同開発した「ブロックチェーンを活用した出来形情報管理システム」の実用化に向けた研究開発に着手したことを2021年7月26日に発表した。
ブロックチェーン上のハッシュ値と比較することで改ざんの有無を確認可能
建設業界では、施工現場でのICT活用を推進しており、受注者が現場で収集する出来形計測のデータを発注者が監督・検査に活用するために、技術基準類の整備が進められている。出来形計測のデータは、出来形検査の根拠となるデータとして直接使えれば、実地検査の省略など、工程の合理化を図れるが、そのためには計測データの信頼性を確保する仕組みを構築しなければならないといった課題があった。
上記の問題を解消するために、清水建設と東京大学大学院工学系研究科は、書面確認のみで出来形検査の信頼性を確保するプラットフォームとしてブロックチェーンを活用した出来形情報管理システムを開発した。
ブロックチェーンを活用した出来形情報管理システムは、保存した情報に耐改ざん性を付与できるブロックチェーン上に、施工現場で収集した出来形計測データを格納することで、当該データの信頼性を確保する。このシステムを発注者の出来形検査に展開することで、受注者が提出した検査帳票における根拠データの改ざんをシステム上で検証可能となり、検査プロセスの合理化を果たせる。
システムの基盤となるのは、ブロックチェーンやデータストレージ、入力値のハッシュ値生成プログラムで、出来形計測データをシステムに保存すると、入力データにリンクしたハッシュ値が生成され、ブロックチェーンに記録される。さらに、ブロックチェーン上の情報は、改ざんが不可能なため、検査時に対象データのハッシュ値を再取得し、ブロックチェーン上のハッシュ値と比較することで改ざんの有無を確かめられる。
システムの実用化に向けた研究開発の第1弾として、清水建設と東京大学大学院工学系研究科は、ICT活用が増えている土工事の出来形検査を対象にしたシステムを構築し、2021年11月に実現場での試行を開始する。
加えて、土工事の出来形確認に利用する点群情報の信頼性を確保するシステムの構築に取り組み、点群情報と設計情報から施工誤差を判定するための解析・閲覧技術も新たに開発し、建設生産プロセスの生産性向上につなげていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 大林組がコンクリート受入検査システムにブロックチェーンを活用、改ざんを可視化
大林組は、コンクリート受入検査システムのデータを改ざんできないようにする「検査履歴管理システム」を開発し、実証実験を行っている。今後、同社は、今回の実証実験で、コンクリート受入検査システムを対象とした検査履歴管理システムの有効性を確認し、将来的には建設現場内に設けられたさまざまなシステムのブロックチェーンと連携することを検討している。さらに、協力会社との取引でも納品や返却などの情報を共有化し、突合作業を簡素化するなど現場業務の平準化を目指す。 - 積水ハウス×KDDI×日立が協創、初弾の実証では“ブロックチェーン”で賃貸契約の本人確認を一元化
積水ハウス、KDDI、日立製作所の3社は、企業が持つ独自情報を安全性の高い環境で共有し、異業種データの掛け合わせによる新サービスを創出する目的で、「企業間情報連携基盤」の実現に向けた協創を開始した。初弾として2019年4月から、賃貸住宅に関する手続きをイーサリアムブロックチェーン「Quorum(クォーラム)」上で行う。これまでの賃貸契約の様に、各種手続きでその都度、個人認証をする必要が無くなり、一括して行えることで借り主側に利便性がもたらされる。 - 地震データの改ざんを防ぐ、“ブロックチェーン”を活用した地震被害のシミュレーションの開発に着手
不動産テックのツバイスペースが、建築テック業界を対象に、地震データの改ざん防止を担保しつつ、AIを使って、地震の被害シミュレーションを可能にする画期的なシステムの商用サービス開発に乗り出した。 - 戸田建設が東京都の電力計画に参画、太陽光発電の環境価値をデジタル通貨に
戸田建設は、東京都の「次世代電力システムによる電力データ活用モデル構築に向けたプロジェクト」に参画し、同社グループ社員が保有する太陽光発電で、自家消費分の電力に含まれる環境価値を抽出し、デジタル通貨に変換して、提供するスキームについて実証している。 - 横浜・関内エリアでオープンイノベーション推進に向け、横国大と三菱地所が共同研究
横浜国立大学と三菱地所が、横浜・関内エリアでのオープンイノベーション推進に向けた共同研究を開始した。 - 【第2回】不動産業界のDXは、不動産業務支援の分野へ
前回は、戦後から消費者向け不動産ポータルサイトが誕生するまで、不動産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)の歴史を振り返りました。不動産業界のデジタル変革は、不動産の情報流通から不動産業務の支援へと広がっていったことが、お分かりいただけたことかと思います。第2回は、近年注目を集めている不動産テック市場の初期から現在までを振り返ります。