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【第2回】不動産業界のDXは、不動産業務支援の分野へ急成長を遂げる不動産テック市場の行方(2)(1/2 ページ)

前回は、戦後から消費者向け不動産ポータルサイトが誕生するまで、不動産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)の歴史を振り返りました。不動産業界のデジタル変革は、不動産の情報流通から不動産業務の支援へと広がっていったことが、お分かりいただけたことかと思います。第2回は、近年注目を集めている不動産テック市場の初期から現在までを振り返ります。

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■“不動産テック”とは?

 “不動産テック”とは、不動産×テクノロジーの略で、テクノロジーの力によって不動産に関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みを指します。業界では現在、インターネットやITツールを利用するだけではなく、AI、IoT、ブロックチェーン、VR/AR、ビッグデータなど、テクノロジーやデータを導入することで、これまでの不動産ビジネスを変革しようとしています。

 不動産テックのサービス領域は、入居申し込みなどにおける電子サインや物件内見時のVR活用、レコメンド型の住まい探し、インターネットを利用した顧客マッチング・接客など多岐にわたります。

 2018年には、不動産とテクノロジーの融合を促進し、不動産に関わる事業並びに不動産業の健全な発展を図り、国民経済と国民生活の向上及び公共福祉の増進に貢献することを目的とした「不動産テック協会」も設立されました。

■テクノロジーで変わる不動産業務

 不動産業界といえば、郵送やFAX、電話でのやりとりの多さが特徴です。不動産ポータルサイトなどインターネットで物件を検索し、メールや電話で不動産会社に問い合わせをした後、物件の内見や入居申し込み、重要事項説明、契約などの各フローで、不動産会社への訪問と書類への記入と捺印(なついん)が必要になります。

 紙媒体でやりとりをすると、記入漏れや誤字脱字、またはFAXで文字がつぶれて読み取れないことも多く、そのたびに不動産会社は電話で確認しているケースが多いのが現状です。


賃貸借契約書イメージ

 不動産テックが導入され始めたのは、「重要事項説明(以下、重説)」業務からといわれています。2015年8月末からITを活用した重説の社会実験が開始されたことをきっかけに、オンラインで重説が行えるITツールが登場しました。

 次に、「物件確認」という不動産業界特有の業務で、効率化を図るツールに注目が集まりました。物件確認とは、不動産仲介会社が消費者に物件を紹介する際、事前に物件の成約状況や紹介の可否を不動産管理会社に電話で問い合わせる業務。その物件確認の電話が、1日100件以上かかってくるという不動産管理会社も少なくありません。

 そのたびに不動産管理会社は、接客や事務作業を一時中断し電話に対応しているため、なかなかコア業務が進まないという課題を抱えていました。

 そんな課題に対応できるよう、2017年頃から物件確認の電話に自動応答するサービスが続々と登場。徐々に導入する不動産管理会社が増え、「物件確認の電話が9割減少でき、コア業務に集中できるようになった」という効果を実感する声も多く挙がっています。アットホームも2017年9月に、AIで物件確認を自動化するサービス「スマート物確」をリリースしました。

 その他、賃貸物件の入居申し込みをWeb上で行えるオンライン入居申し込みシステムや紙ベースで行われてきた契約更新書類などへの署名をデジタル化する電子サインサービス、内見予約や鍵の受け渡しをオンラインで完結できるサービスなど、2018〜2019年にかけて各社からさまざまな不動産業務支援ソリューションが発表され、不動産業務全般でDXが進みました。


アットホームが提供するスマートシリーズ

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