電気化学的防食工法「リペアカーテン」を供用中の橋梁に適用、安藤ハザマ:施工
安藤ハザマは、2016年に電気化学的防食工法「リペアカーテン」を開発した。同社は、北陸地方の市町村が管理する橋梁の維持管理に有効な技術を選定するイベント「補修オリンピック」に参加し、市道として供用中のRC造橋脚1基にリペアカーテンを適用。今後は、補修オリンピックの経過観察期間となる5年間の効果検証を行いつつ、中性化や塩害対策を必要とする他の構造物への適用を進めていく。
安藤ハザマは、北陸地方の市町村が管理する橋梁(きょうりょう)の維持管理に有効な技術を選定するイベント「補修オリンピック※1」に参加し、ASR※2が生じうる構造物にも使える中性化※3の予防保全技術である電気化学的防食工法「リペアカーテン」を供用中の橋梁に適用したことを2021年6月14日に発表した。
※1 補修オリンピック:北陸地方の市町村が管理する橋梁の維持管理に有効な工法や材料を選定することを目的に、民間企業から技術提案の公募を行い、試験的に適用して5年程度の経過観察を行うイベントであり、富山市と北陸SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)のメンバーらが連携して実施している取り組み
※2 ASR:Alkali Silica Reactionの略称で、コンクリート内部のアルカリにより、コンクリート中の骨材がゲル状物質に変化して膨張し、コンクリートにひび割れを発生させる劣化現象
※3 中性化:空気中の二酸化炭素により、コンクリート中の水酸化カルシウムが炭酸カルシウムに変化し、コンクリートのアルカリ性が低下する劣化現象
14日の適用で28.5mmの中性化を改善
リペアカーテンは、電気化学的防食工法のうち「再アルカリ化工法」「脱塩工法」「電着工法」の施工技術であり、土木学会発行の電気化学的防食工法指針では「簡易給水方式」として分類されている。特徴は、中性化や塩害による劣化を受けたRC造の構造物に直流電流を通電することで、劣化したコンクリートを健全な状態に回復させる効果が得られる点。
さらに、大気圧を利用して気泡緩衝シートをコンクリート面に押し付けることで、コンクリート面に電解質溶液の水膜を形成すると同時に仮設陽極材を密着させ、陰極とする内部鉄筋との間に直流電流を通電できる。
今回の補修オリンピックでは、富山県富山市が管理する市道として供用中のRC造橋脚1基(幅1.1×奥行き5.5×高さ2.5メートル)に、安藤ハザマはリペアカーテンを14日間適用した。この橋脚は、中性化対策が必要であることに加えて、北陸地方のコンクリート構造物に多く見られる劣化現象であるASRが生じる危険性があった。
そのため、一般的な電気化学的防食工法を適用してアルカリ性を回復すると、ASRを促進してしまうことが懸念されていた。そこで、安藤ハザマは、ASR対策の事前検討結果に基づき、炭酸リチウム水溶液を電解質溶液として採用した。
対象の橋脚は、コンクリート表面から最大28.5ミリの深さまで中性化していたが、リペアカーテンの適用により、コンクリート表面までアルカリ性が回復した他、外観に変化はなく、ASR特有の変状も見られなかった。
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