東急建設がインフラ新技術の開発を本格化、初弾でトンネル自動点検システムを順次適用:検査・維持管理
東急建設は、インフラ点検における新技術の開発へ本格的に乗り出す。初弾では、内閣府主導で府省・分野の枠を超えて開発されたトンネルの自動点検システムを実施工物件に適用を進め、社会実装を目指す。
東急建設は、2019年4月からインフラアセットマネジメント(IAM)事業の本格参入を視野に入れ、土木事業本部内にIAMを推進する組織を新たに発足させた。同組織では、第1弾として、2014〜2018年度にかけて内閣府「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」で開発した「トンネル全断面点検・診断システム」を実施工で活用していく。
交通を阻害しない変形フレーム型点検システム
トンネル全断面点検・診断システムは、点検ロボットが道路を跨(また)ぐ形で、トンネル内を走行することにより、自動車などの通行を妨げることなく点検を行える新技術。覆工コンクリートのひび割れと、浮きを自動検出するひび割れ検出ユニット、打音検査ユニットを装備しているため、定量的かつ経時的な変化も把握することができる。
点検後には、独自の「エキスパートシステム」で、点検結果をベースにトンネルのライフサイクルコスト(LCC)を考慮した最適なコストの補修方法が提示される。
開発の背景には、高度成長期に建設された橋梁(きょうりょう)やトンネルなどの道路構造物は高齢化が進み、2033年には全国に約1万本ある道路トンネルの約半数が竣工後50年以上が経過すると試算されている。東急建設では、今後懸念される重大な事故リスクの顕在化や維持修繕費の増大、熟練技術者の減少に対応する新たなインフラ維持管理技術として、これまで人力に頼っていたひび割れ調査や打音検査をロボット技術で自動化することを発案した。
2018年10月にはシステムの実用化検討を目的に、千葉県南房総市が管理する1983年竣工の平沢トンネル(延長130メートル)で、5年に1度のトンネル定期点検に併せ、実証実験を実施した。実際に車両が通行する中でシステムを稼働させた結果、交通への影響が少ないとその有効性が確認された。
今後、東急建設では、IAM事業として、調査コンサルタント会社との技術提携も含め、新技術の運用体制構築や自社施工物件での運用を軸に実用化へと取り組む。
なお、システムは「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」の委託業務により、東京大学、湘南工科大学、東京理科大学、小川優機製作所、菊池製作所と共同で開発した。
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