非GPS環境下で配管点検が可能な水上走行ドローンと自律飛行ドローン、FINDiら:メンテナンス・レジリエンス OSAKA 2021
NJS、自律制御システム研究所(ACSL)、FINDiは、GPSとGNSSのデータが無くても管内を点検可能な閉鎖性空間調査点検用ドローン「AIR SLIDER Fi4」と施設内部点検用ドローン「AIR SLIDER Fi5」を開発した。2021年6月1日には、両機を用いた下水管の調査・点検サービスを開始している。
下水管の経年劣化による不具合は、道路や鉄道の陥没を引き起こすケースがあるため、定期的な点検が求められている。しかし、国内に設置された大半の管路では、衛星からGPS・GNSSデータを取得することが困難なため、これらのデータを活用して位置情報を取得し、自律飛行する通常のドローンでは点検が難しかった。
上記の問題を解消するために、NJS、自律制御システム研究所(ACSL)、FINDiは、GPSとGNSSのデータが無くても管内を点検可能な閉鎖性空間調査点検用ドローン「AIR SLIDER(エアースライダー) Fi4」と施設内部点検用ドローン「AIR SLIDER(エアースライダー) Fi5」を開発した。
NJSとFINDiは、メンテナンスと国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)をテーマに掲げた建設総合展「メンテナンス・レジリエンスOSAKA 2021」(会期:2021年7月14〜16日、インテックス大阪)内の「インフラ検査・維持管理展」でFi4とFi5を披露した。
ひび割れの撮影と大きさの計測が可能
NJSは、建設コンサルタント会社で、上下水道に関するコンサルタント業務を展開する。FINDiは、NJSとACSLが共同出資して2021年5月に設立した会社で、Fi4やFi5を用いた管路の調査・点検サービスを提供している。
Fi4は、筐体の素材がカーボンで耐久性に優れており、機体の形は船型で管路底の凹凸に引っ掛からずに飛べ、水上走行用アタッチメント「Water Slider(ウォータスライダー)」を装着することで流水環境下での水上も走れる。フライト制御システムにはACSL製の「ACSL AP3」を採用し安定した飛行を実現した。
設置された調査用スタビライザーカメラは、防水仕様で、4Kの動画を撮れる他、ひび割れの撮影と大きさの計測に応じている。操縦する際には、搭載されたFPV(First Person View)カメラで取得した映像を専用のモニター付きコントローラーで見つつ操作する。専用のコントローラーや調査用スタビライザーカメラ、FPVカメラの通信は5GHzのWi-Fiで行う。機体の前後には、LEDライトを取り付けているため、FPVカメラと調査用カメラで暗所も撮れる。
FINDiの担当者は、「Fi4は、発泡素材を採用したバンパーを備えており、調査対象の管路に接触しても損傷を与えにくく、もし破損しても取り替えが利く。バンパーは、自己位置を推測するセンサーを内蔵しており、管内の中心に機体の位置をキープする」と話す。
Fi4の最大飛行速度は毎秒3メートルで、最大飛行時間は約4分。防塵・防水性はIP55。290(幅)×140(高さ)×610(奥行き)ミリ。管径200ミリ以上の管路点検に対応。調査カメラとバッテリーを含んだ重さは2.4キロ。バッテリーの容量は5200ミリアンペアアワー。
LiDAR SLAM技術で自律飛行
Fi5は、レーザーを照射することで、自己位置と方角を推定する「LiDAR SLAM技術」を実装しており、事前に対象管路のフライトルートを設定すれば、非GPS環境下でも自律飛行させられるため、管渠(かんきょ)などの点検で役立つ。「装着している調査用カメラで撮影した対象物の映像を基に、Fi5の内部で3次元マップの作成と保存が可能なため、リサーチの結果をまとめたレポートを作りやすい」(FINDiの担当者)。
操縦は専用のコントローラーとFi5を2.4GHzのWi-Fiで通信することで行える。フライト制御システムは、Fi4と同様に、ACSL AP3。オプションとしては、2.4GHzと5.7GHzの映像伝送システムや赤外線機能を備えた可視光カメラを用意している。
Fi5の最大飛行速度は、完全自律飛行時が水平と上昇下降ともに毎秒2メートル。最大高度は150メートル。最大対気速度は毎秒20メートルで、最大飛行時間は20分。360(高さ)×704(奥行き)ミリ。管径400ミリ以上の管路点検に対応。バッテリーを含んだ重さは3.4キロ。バッテリーの容量は1万ミリアンペアアワー。
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