加速が進む不動産・住宅業界へのインフォマートの電子契約サービス、“インボイス制度”にも対応:電子契約(3/3 ページ)
インフォマートは2018年7月より、電子契約のサービス「BtoBプラットフォーム契約書」をリリース、これまで約3年間で2万6200社(2021年7月12日時点)が利用するまでに達した。これはコロナ禍を機に急速に拡大した在宅勤務の推進を背景に、「脱ハンコ」「脱FAX」が後押ししたためと考えられる。今後は2021年5月に可決されたデジタル関連法案により、特に慣習的に押印の多い不動産業業界でも、電子契約書へのシフト加速がさらに進むと予想される。また、経理分野でも、2023年10月導入予定の国税庁「インボイス制度」への対応として、企業間取引の電子化は避けられないものとなっている。
デジタル関連法案が電子契約へのシフト加速
不動産業界における電子契約へのシフト加速が予想される背景として、デジタル庁より2021年5月に可決された「デジタル関連法案」がある。これはデジタル社会の形成を図るため、関係法律の整備に関する法律案である。
その中でも、不動産業界への影響が予想されるのが、「押印・書面の交付等を求める手続きの見直し」としての48法律の一括改正である。
齋藤氏は重要な改正として、次の2つを挙げた。
1.宅建業法改正(執行は2022年5月19日から※1年猶予あり)
以下の契約書の電子交付が可能になる。
- 売買の媒介契約書(宅建業法34条)
- 賃売の重要事項説明書(宅建業法35条)
- 賃貸借契約書(宅建業法37条)
- 売買契約書(宅建業法37条)
2.借地借家法改正(施行は2021年9月1日から)
定期借地契約、定期借家契約の電子契約が可能になる。
「従来の法律では、契約書は紙でなくてはいけないと決められていた訳ではない。しかし今回の法律改正で、はっきりと電子契約が可能だと明言された」(齋藤氏)。
だが不動産企業では、「契約書が電子で大丈夫なのか?」という声が少なくないという。齋藤氏は「(忘れがちだが)売買契約、賃貸借契約などの契約書類は国税関係書類。そのため、甲乙ともに電子帳簿保存法(電帳法)への適用が重要だ」と話す。
不動産業界の社内ルールがDXのポイントになる?
ここで不動産業界における契約書の事例として、齋藤氏よりインフォマート本社ビルの賃貸借契約書の実物が示された。
本社ビルの賃貸借契約書では、区分所有されているため賃貸人が2人、賃借人であるインフォマート、そして仲介業者2社の各担当者の押印があり、見事に「押印だらけ」の契約書である。
「宅建業法では賃貸および賃借人の押印だけでよい。しかし、おそらく不動産業界の社内ルールがあり、慣習的に仲介会社の押印が必要になっているのだろう」(齋藤氏)と解説する。
齋藤氏によると、法律改正で一気に不動産業界のDXが進むかどうかは、こうした社内ルールがどこまで緩和されるかがポイントだとする。さらに、(賃貸人と賃借人だけでなく代理人、連帯保証人など)当事者が多い場合は電子化が進みにくいと予想している。インフォマートのユーザーも、賃貸人と賃借人の1対1となる売買契約書や賃貸契約書が多いとのことだ。
不動産業界でのBtoBプラットフォーム契約書の優位性と導入企業の例
不動産業界の特色として、当事者が多い場合など、今後しばらくは紙の契約書が必要だと推測される。そこでBtoBプラットフォーム契約書の優位性としては、電子と紙の契約書を同時に保管・管理するというサービスが行われている。自社保管が文書スキャン保管機能で可能となり、契約書管理や社内共有が簡素化され、ファイルストレージとしても使用できる。加えて、過去に締結した紙の契約書の保管にも対応している。
その他、1つのアカウントでプラットフォーム上の複数のサービス、最大5社間の契約まで使用可、取引先も含めて電帳法に対応しているなど、導入メリットは多い。
齋藤氏は、BtoBプラットフォーム契約書の導入企業として、総合不動産会社のリヴグループと、北陸エリアを拠点に不動産仲介などを行うさくらホームグループの2社を紹介した。
・リヴグループ
グループ会社間で導入が進んでおり、1対1の当事者が少ないサブリース契約での導入がスピーディーになった。
・さくらホームグループ
グループ会社間での工事請負契約の導入により、年間約700万円の印紙代および紙とインクのコストカットに成功した。また対面での押印が不要となり、締結の時間が大幅に削除され、データ保管の場所もとらず、必要な時にすぐ取り出せると好評を得ている。今後は、まだ紙の契約を行っているグループ会社間との書類の電子化を実現し、将来は社外との不動産事業での各種契約時に導入を目指している。
勉強会の最後に齋藤氏は、「(両社とも)導入しやすい部分から、電子化を進めている」と結んだ。
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