現場の作業負担軽減を目的に、大成建設らが作業用アシストスーツの共同研究を開始:産業動向
大成建設は、北海道大学大学院の田中孝之教授や苫小牧工業高等専門学校の土谷圭央助教授、スマートサポートとともに、現場作業の負荷軽減を目的に、作業用アシストスーツの一種である「スマートスーツ」着用に関する共働研究を開始した。今後、大成建設は、建設業界の高年齢労働者活用による労働力確保やデジタルトランスフォーメーションで技術伝承を推進するため、北海道大学らとの共同研究を通し、厚生労働省や国土交通省などが進める事業やプロジェクトと連携を図っていく方針だ。
大成建設は、北海道大学大学院の田中孝之教授や苫小牧工業高等専門学校の土谷圭央助教授、スマートサポートとともに、現場作業の「軽労化※1」に向け、作業用アシストスーツの一種である「スマートスーツ※2」着用に関する共同研究を開始したことを2021年4月21日に発表した。
※1 軽労化:北海道大学大学院情報科学研究院ヒューマンセントリック工学研究室 田中孝之教授が提唱する健康労働寿命の延伸を目的として、労働の負担や疲労を軽減する概念。具体的には、労働による傷病リスクを低減し、柔軟性やバランスなどの主体的な動きのサポートなど適切な身体能力を継続して維持するため、スマートスーツによるアシスト技術を活用する
※2 スマートスーツ:国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構の「課題解決型福祉用具実用化開発支援事業」および「イノベーション推進事業課題解決型実用化開発助成事業(福祉用具)」で開発した作業アシストスーツの一種。北海道大学がスマートサポート社と共同で、ロボット工学、動作解析、弾性材解析などのロボット関連技術を駆使して開発した補助装具でもある
建設作業員の業務環境に応じた用途別スーツと機能の開発も実施
昨今の少子高齢化に伴い、建設業界では他産業と比較して就業者の高齢化と入職者の減少が顕著となっており、深刻な問題となっている。そのため、建設業では、生産性向上を目指す機械化やロボットの技術開発とともに、現場の労働をサポートするアシスト技術も注目されている。
また、厚生労働省では、70歳までの高年齢労働者の就業機会確保に向けた環境整備を進めるとともに、高年齢労働者への処遇改善や安全衛生対策に配慮した企業への支援を開始した。一方、国土交通省では、i-Construction推進の一環として、「建設施工におけるパワーアシストスーツ導入に関するワーキンググループ」を設立し、2020年8月に活動を始めた。
上記のような取り組みの影響を受け、大成建設が2020年度に実施した現場内でのヒアリングでは、作業アシストスーツの現場導入への期待や意見が作業員から多数寄せられた。
そこで、同社は、北海道大学大学院の田中孝之教授や苫小牧工業高等専門学校の土谷圭央助教授、スマートサポートとともに、軽労化に向けた共同研究をスタートした。共同研究では、大成建設のモデル作業所にスマートサポートが開発したスマートスーツを試験導入し、積極的にスーツの試着・適用を行うことで軽労化の概念を社内に普及しつつ、現場作業を通じて機能を検証する。
具体的には、建設現場で生じつ作業員の腰部負担と腰痛重症度との関連性を把握し、リスク要因を分析する他、体力測定やウェアラブルセンサーで身体能力の評価とデータ分析を行う。さらに。建設作業員の業務環境に応じた用途別スーツと機能の開発も実施し、建設作業員の処遇改善や安全衛生対策に向けたアシスト技術の有効活用も検討する。
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