フルハーネス対応の上向き作業用アシストスーツが狭小空間で施工しやすく進化:第6回ウェアラブル EXPO
近年、建設業界では技術者の減少が大きな課題となっている。国土交通省の資料によれば、技術者の人口は1997年の455万人を境に減少し、2015年には331万人になり、このうち約3割を55歳以上が占めた。ダイドーは、業界の現状を踏まえ、老若男女を問わず、建設業務で生じる肉体的負荷を軽減する上向き作業用アシストスーツを開発し、改良を進めている。
ダイドーは、「第6回ウェアラブル EXPO」(会期:2020年2月12〜14日、東京ビッグサイト)に出展し、上向き作業用アシストスーツ「TASK AR1.0」の新バージョン「TASK AR2.0」を訴求した。
腕部のデザインを刷新
旧バージョンのTASK AR1.0は、建設現場で行われるビス打ちなどの上向き作業で生じる負担を軽減することを目的に開発された製品で、2019年2月に発売された。作業者が腕を48度上げると、駆動部に組み込まれたガススプリングが支持力を発生し、腕を胸の高さから頭上まで支える。フルハーネスにも対応しており、高所作業でも使える。
腕を持ち上げる力は、動力となるガススプリングのタイプを変更することで、調整可能だ。タイプはレベル1〜4の4種類で、レベル1は2.2〜3.1キロ、レベル2は3.1〜4キロ、レベル3が4〜5.4キロ、レベル4が5.4〜6.8キロのアシスト力を備えている。ガススプリングは稼働するために、電力を必要としないので、充電や電池切れなどを気にしないで業務を進められる。
サイズは1種類だが、使用者の身長に合わせて装着する位置を背部に取り付けられた器具でコントロールできるので、身長約150〜190センチまでに応じている。セッティングは1人で容易に取り組め、要する時間は約1分だという。
新バージョンであるTASK AR2.0の改良ポイントは2点で、1つは背部の凸部をスリム化したこと。TASK AR1.0と比較して10センチ凸部が小さくなっている。ダイドーの担当者は、「従来型の場合、この凸部が狭小空間で作業する際に、業務の妨げとなっていた。今回の改良により、狭いスペースで施工することが簡単になったと考えている」と説明した。
腕を固定する部材のデザインも刷新したことで、TASK AR1.0と比べて、腕を包み込む形状になっており、素材自体が痛みにくい仕様になったという。
TASK AR1.0の価格は販売代理店により異なり、30〜40万円(税別)で、2020年5月発売予定のTASK AR2.0は未定。
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