凝結促進材を用いたコンクリート凝結制御技術「ACF工法」、凝結完了時間を短縮:施工
清水建設は、デンカと共同で、仕上げ作業に伴うコンクリート施工の生産性向上を目的に、コンクリート凝結制御技術「アドバンストコンクリートフィニッシュ工法(ACF工法)」を開発した。今後、清水建設は、土木・建築のコンクリートスラブをはじめ、仕上げ作業に伴うコンクリート施工にACF工法を積極的に適用し、作業従事者の働き方改革、仕上げ面のコンクリート品質向上につなげていく。併せて、デンカを通じて、凝結促進混和材の外販にも取り組む予定だ。
清水建設は、デンカと共同で、仕上げ作業に伴うコンクリート施工の生産性向上を目的に、コンクリート凝結制御技術「アドバンストコンクリートフィニッシュ工法(ACF工法)」を開発したことを2021年6月1日に発表した。
生コン車に投入するだけでコンクリートが凝結硬化する時間を短縮
仕上げ作業に伴うコンクリート打設作業は、コンクリートの凝結が進行するのを待ち、上面をコテなどで平滑化する業務を行った後、養生の準備を整えた段階で完了する。コンクリートの凝結は気温が低くなるほど遅延するため、寒冷期には、仕上げに適した状態になるまでの待機時間が長期化し、状況によっては作業の完遂が深夜になることもある。
さらに、凝結の硬化が遅れると、練混ぜ水の一部がコンクリート表面に上昇する「ブリーディング」が長くなり、コンクリートの沈下ひび割れなど、表層部分の品質低下につながる。
上記の課題を解決するため、耐寒促進剤、早強剤、硬化促進剤と呼ばれる液体状の混和剤を利用する場合もあるが、必要な添加量が多く、コンクリート材料の一部として配合設計を行わなければならない。そこで、清水建設とデンカはACF工法を開発した。
ACF工法の特徴は、現場で簡易に添加できる粉末状の凝結促進用混和材(ACF)を生コン車に投入するだけで、コンクリートが凝結硬化するまでの時間を短縮する点。コンクリート凝結の進行が遅くなる寒冷期でも、通常期と同レベルの凝結速度を確保するため、仕上げ作業に早く着手することが可能となる。
ACFは、サルフォ系塩を主成分とする粉末状の混和材で、現場に到着した生コン車に必要量を投入した後、ドラムを高速攪拌(かくはん)して均一に分散させるだけで、セメントの水和反応が活性化し、凝結促進効果が得られる。ACFの標準添加量はコンクリート1立方メートル当たり当たり2〜6キロ。
清水建設は既に、青森県中泊町で施工を進める「中泊くにうみウィンドファーム」の風車基礎工事にて、傾斜面を備えるフーチング表層部のコンクリート施工で、ACF工法を適用している。中泊くにうみウィンドファームの風車基礎工事では、各種施工条件を鑑み添加量を1立方メートル当たり3.3キロとし打設作業を実施した。
結果、気温5度の低気温環境下で適用したケースでは、コンクリートの打ち込み後、1時間程度で仕上げ作業に着手し、ACF工法を採用しなかった場合と比べて、作業完了時刻を4時間以上早められた。また、品質面でも、ブリーディングの低減効果により、発生リスクが高い傾斜面の沈降クラックを抑えられた。
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