コンクリートを装飾?凸版印刷が特殊インキで開発に成功
凸版印刷は、コンクリートに直接デザインを施せる特殊インキを使った新印刷技術を開発した。タイルの代わりとして外壁加飾市場や擁壁ブロックへの導入を見込み、デザイン受注も含めて販売展開していく。2018年6月7日に凸版印刷本社で、実物を前に、なぜコンクリートの加飾なのか、開発意図などを担当者に聞いた。
凸版印刷は2018年6月5日、コンクリートの硬化を遅らせる特殊インキを用いて、コンクリートに直接デザインを付与できる加飾工程紙「べトンフィット」を開発した。コンクリートの製造工場やゼネコン、デベロッパー向けに、2018年6月5日から、タイルの代わりとして外壁加飾市場や擁壁ブロックへの導入を見込み、デザイン受注も含めて、本格的に販売展開する。
特殊インキを使った印刷技術で、生コンに自在なデザインが可能に
べトンフィットは、コンクリート型枠の底に敷き、その上に生コンクリートを流し込んで、一定期間の養生後に固まったあと、水洗いすることでコンクリートの内面が露出して絵柄が現れるという仕組み。
特殊インキはコンクリートの硬化を遅らせる効果があり、ミクロン単位の塗布量の違いでコンクリートの凹凸を変えた細かい表現ができるようになる。プレキャストコンクリート製品でありながら、彫刻方式でしかできなかったコンクリートの表面色と内部色の2色で表現する。
一例として、石の表面仕上げ方法で、石ノミを使って細かな平行線を刻みこんでいく、「小叩き仕上げ」は、これまで非常に手間がかかり、単価も高かった。べトンフィットであれば、原紙にベタ印刷するだけで、コンクリートの硬化後、水で洗い出す工程のみで、何枚も連続して作成できる。
従来の型押しや彫刻、タイル貼りなどの加飾とは異なり、印刷のため豊かなデザイン表現ができることもウリの1つで、仕上がりも事前にイメージがしやすい。金型も不要で、製品は最大柄ピッチ 幅1150mm×長さ2400mmのロール形状で供給することができるため、工期の短縮と大幅な生産性の向上がもたらされる。
ベトンフィットの設計価格は2万円/m2(平方メートル)。200m2から受注生産を受け付ける。製版費用はデザインによって異なるという。
デザインについては、凸版印刷でもオーダーを受け付ける。社内にデザイナーを有し、化粧シートや壁紙の柄づくりを行っているノウハウを生かして、パターンが連続したつなぎ目にコツがいる幾何学模様などのデザイン提案もしていくという。
凸版印刷 環境デザイン事業部の担当者は、「外壁に加飾する場合は通常タイルが用いられるが、落下の危険性やコスト面がネック。タイルに代わる提案をしていき、公園内のベンチに土地柄の意匠を施すことで、絵柄を付けたいニーズが多い擁壁ブロックなどへの導入も図っていく。まずはシートの周知を展開し、将来的には、ウッドデッキなど別の製品とも組み合わせて拡大していく」と話す。
同社では、べトンフィットで、外壁加飾市場において2020年に関連の受注生産を含めて、約20億円の売り上げを目指している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ナノ技術で約2倍の耐傷性を保有する非塩ビ化粧シートを開発、凸版印刷
ナノ材料をカプセル化した「Smart NANO」技術を搭載した新商品「101エコシート Smart NANO」の色柄サンプルを6月から出荷。今秋からの本格販売を目指す。 - 大成建設が流動化コンクリート開発、材料コストを2割カット
大成建設は一般的な生コンに粉末パックの流動化剤・増粘剤を混ぜるだけで作成できる流動化コンクリート「T‐エルクリート」を開発した。2017年9月末から型枠工事の現場で実際に導入されており、2018年4月には同社の研究センターでその有効性が実証された。 - CO2を25%削減する新型コンクリート、価格と耐久性もばっちり
あらゆる建物に利用されるコンクリート。鹿島建設は従来より製造時におけるCO2排出量を25%削減した新型コンクリートを開発した。耐久性やコスト面でも一般的なコンクリートと同水準を保っており、建物の建設時におけるCO2排出量の削減に貢献できるという。 - 乾燥収縮のひび割れ防ぐ、コンクリート技術を確立
フジタは安藤・間、熊谷組、佐藤工業、戸田建設、西松建設、前田建設工業の6社と共同で、コンクリートの乾燥収縮によるひび割れを制御できる技術を確立。研究施設と教育施設の化粧打放し壁、事務所ビルの外壁、物流施設の床スラブなどに既に導入されている。