コンクリートの初期強度を高める新工法、戸田建設:新工法
戸田建設は太平洋マテリアルとともに、覆工コンクリート作業でコンクリートの打ち込み後に、短時間で型枠が取り外せる新工法を開発した。
戸田建設は、太平洋マテリアルと共同で、コンクリートの初期強度を高める工法「アーリークリート」を開発した。コンクリートの初期強度とは、トンネル覆工の打込みから脱型までの時間(打込みから24時間以内)に現れる強度を指す。
従来比で約150〜180%の初期強度を実現
山岳トンネルやシールドトンネルの2次覆工コンクリート作業では、コンクリートの打ち込みから型枠の取り外しまでの時間が短く設定されていた場合、条件によっては、型枠の除去に必要な初期強度が確保されず、次の工程へ進めないことがあった。
そのため従来の対処法は、養生温度を上げるなど、設備面での工夫により、求められるコンクリート強度を確保することが一般的だった。しかし、現場の環境によっては、養生設備が過大になることや覆工コンクリートの断面で均一に強度の発現が見込めないといった問題が生じ、コストや品質の面で必ずしも効果的な対策とは言えなかった。
こうしたネックを解消したのが戸田建設が開発したアーリークリートだ。アーリークリートは、一般的な膨張材より反応が早い早強性の膨張材と亜硝酸カルシウムをベースとした硬化促進剤を覆工コンクリートに添加することで、通常使用されるコンクリートに匹敵する性能を保持しながら、打ち込み後14〜20時間で、従来と比較して約150〜180%の初期強度が可能になる。
両社が行った実証試験では、一般的な覆工コンクリートと比べ、アーリークリートを適用した覆工コンクリートでは、初期強度の出現が加速されるため、コンクリート組織の緻密化や長期の耐久性が向上すると判明した。
新工法は既に、福島県が発注した道路橋梁(きょりょう)の整備工事で、山岳トンネルの覆工コンクリートに初適用されている。今後、戸田建設では、現場の環境に合わせて、アーリークリートを山岳トンネルやシールドトンネルの覆工コンクリートに導入していく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 【新連載】サステナビリティと循環型社会形成は会計・税務では不可能!建設業の打開策を説く
本連載では、建物の大規模修繕工事で生じる会計学や税法上の問題点やその解決策を千葉商科大学 専任講師 土屋清人氏(租税訴訟学会 常任理事)が分かりやすくレクチャーする。 - 【第6回】「迷走する設備BIMの後れを取り戻せ!」(前編)
日本での設備BIMがなかなか進んでゆかない。これは大和ハウス工業も例外ではない。しかし、日本の設備業務は、意匠・構造とは異なる“特殊性”があり、これがBIMに移行しにくい原因とされている。しかし、BIMに移行するためには、設備のBIM化を避けて通ることはできない。どう乗り越えてゆくかが重要な鍵になる。そこで、設備BIMが置かれている現状の課題を分析した上で、設備BIMのあるべき姿を示し、設備がBIMに移行するために何をしなければならないかを、同社技術本部 建設デジタル推進部 次長・伊藤久晴氏が前後編の2回にわたり詳説する。 - 【新連載】日本のBIM先駆者が警鐘を鳴らす「なぜ日本のBIMはダメなのか?」
日本の建設業界は、低い生産性、労働者の老齢化、多くの労働災害など、市場が破綻しかねないほどに深刻な問題が目前に迫り、一刻も早く手を打たなければならない局面に差し掛かっている。特効薬となるのが、BIMとそれを核に据えたICT活用だと、今では多くの業界人が知るところだが、建設の全工程で実践活用できている企業はほぼ皆無と言えよう。2020年度に全物件で“設計BIM化”の大望を抱く大和ハウス工業で、日本のBIM開拓の一翼を担ってきた同社技術本部 BIM推進部 次長・伊藤久晴氏が、BIMを真に有効活用するための道標を示す。 - 「東京スカイツリー」のライトアップにパナソニックLS社のLED投光器が採用、地上497mへ見に行った
夜の東京スカイツリーを灯すLED照明が2020年2月に刷新された。2020年に開催を予定していた東京五輪に合わせ、通常の「粋」「雅」「幟」の照明デザインに、躍動感が加わり、東京の新たなシンボルとして生まれ変わった。LED投光器は、パナソニック ライフソリューションズ社の製品が新規で347基も採用され、スカイツリー仕様にカスタマイズされた。普段は、滅多に人が立ち入ることが無い497メートル地点まで登り、スカイツリーのライティング増強プロジェクトの裏側を取材した。