大林組が「ニューロクリートNeo」を過密配筋構造物に初適用、コストを20%カット:導入事例
大林組は、東京都内の下水道処理施設工事で、低コスト高流動コンクリート「ニューロクリートNeo」の最上位ランクを初適用した。今回の工事では、「ニューマチックケーソン工法」で2つの函体(かんたい)を沈設し、各函体間を鉄筋コンクリート構造で接続して建設。この函体間接続部は、地下約50メートルの大深度・高水圧の環境下に備え過密配筋となっており、バイブレータによる締め固めができないことから高流動コンクリートのニューロクリートNeoが採用された。さらに、函体間接続部は、鉄筋同士の間隔が極めて狭いことからとくに流動性の高いランク1が使われた。
大林組は、東京都内の下水道処理施設工事で、低コスト高流動コンクリート「ニューロクリートNeo」の最上位ランクを初適用し、20%のコストダウンを達成したことを2021年5月24日に発表した。
温度ひび割れの発生リスクを低減
高流動コンクリートは、土木工事で構造物の配筋状況と形状の複雑さなどから一般にランク1〜3に区分される。ランク1の高流動コンクリートには、非常に高い流動性と材料分離抵抗性※1が要求されるため、比較的高価なセメントが大量に必要となる。そのため、普通コンクリートと比較してコンクリートの材料費が割高になり、さらにセメントとの化学反応による温度上昇に起因する温度ひび割れの発生リスクも高くなるという課題があった。解決策として、大林組はニューロクリートNeoを開発した。
※1 材料分離抵抗性:硬化前のフレッシュなコンクリートの構成材料(セメント、砂、砂利、水)の分布が不均一とならない性能
今回の工事で使用したニューロクリートNeoは、少量で自己充てん性の効果を発揮する新型増粘剤の量と単位セメント量の配分を試験練りにより変更したもので、従来のセメント量が多い高流動コンクリートと同品質のままセメントを1立方メートル当たり最大200キロ減らした。セメント量の削減により従来の高流動コンクリートの単価と比較して約20%のコストダウンを実現。
また、単位セメント量の減量に加えて、事前の3次元FEM温度応力解析※2結果に基づき、セメントには低熱ポルトランドセメント、混和材には膨張材、粗骨材には石灰砕石を使用することで温度の上昇を抑制し、温度ひび割れの発生リスクを抑えた。さらに、函体間接続部の底版打設に際して、地下45メートルまで下方圧送したが、圧送管の閉塞(へいそく)などの不具合は発生せず、コンクリート打設3カ月後でも温度ひび割れの発生は認められなかった。
※2 3次元FEM温度応力解析:コンクリート構造物のひび割れ評価やひび割れ対策の検討を行うために、コンクリートの打設前に構造形状や使用材料などからひび割れ指数(コンクリートの引張強度と発生応力の比)を算出すること
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