“猛暑日”でも流動性を確保するコンクリを大林組が開発、特殊混和剤を添加:新建材
大林組は、猛暑日でも流動性を確保できるコンクリート「サンワーク」を開発した。製造時に特殊混和剤を添加することで、コンクリート温度が35〜40度でも施工性を保ち、コンクリート打ち込みの際に不良施工を防ぐ。
大林組は2021年6月、コンクリート用の特殊混和剤を用いることで、猛暑日でも良好な施工性を確保し、高品質なコンクリート構造物を構築できるコンクリート「サンワーク」を開発したと発表した。
コンクリートの施工性を長時間維持
暑中期のコンクリート工事では、外気温の影響でコンクリート温度も高くなり、セメントの水和反応が促進して硬化が早くなり、打ち重ねた部分が不連続面となる「コールドジョイント」や締固めが不十分でコンクリートが鋼材の周辺や型枠の隅々まで行き渡らない「充てん不良」などの発生が懸念される。そのため、土木学会のコンクリート標準示方書や日本建築学会の建築工事標準仕様書・同解説(JASS5)では、コンクリート温度の上限は35度以下にするように定めている。
しかし、近年はヒートアイランド現象や地球温暖化の影響などにより、最高気温が35度を超える猛暑日が日本各地で発生しているため、コンクリート温度を35度以下に制御することが困難となり、不具合が生じるリスクが高まっている。
今回、開発したサンワークは、コンクリート温度が35〜40度となっても長時間の流動性を確保することで、猛暑日でもコールドジョイントや充てん不良の発生を防止し、高品質なコンクリート構造物を構築できる。また、コンクリート温度が35度以下の場合でも、特殊混和剤の添加量を調整すれば、コンクリートの施工性は維持される。
製造方法は、コンクリートプラントで製造したコンクリートに、特殊混和剤を生コン車のホッパーに添加して攪拌(かくはん)するだけで完了する。また、特殊混和剤は、使用材料(セメント、骨材、混和材、化学混和剤など)の種類に関わらず添加でき、強度や耐久性など硬化後の性状に影響を与えることもない。
大林組では、サンワークを積極的に工事に適用し、猛暑日のコンクリート工事の施工性を改善するとともに、高品質で耐久性に優れたコンクリート構造物を構築していく。
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