注目の機体「Airpeak S1」、ソニーが新規参入するドローン開発の未来:Japan Drone2021(2/2 ページ)
「Japan Drone2021」のソニーブースでは、2021年6月10日に発表されたばかりの業務用ドローン「Airpeak S1」、送信機、モバイルアプリ「Airpeak Flight」、Webアプリ「Airpeak Base」を出品し、多くの観客を集めた。プロペラやモーターなど、独自に設計した部品を含めた機体開発といったハード面から、アプリ開発などの使い方にかかわるソフト面まで、トータルなドローン開発を進めるソニーのビジョンが伝わるブース構成となった。
徹底的にデザインされた操作性
ソニーのドローン開発の視野は、機体性能だけでなく、操作性や飛行管理などサービス面を含めたトータルでの使い方までに及ぶ。
機体を操作するのは、プロの現場ニーズを最大限に汲(く)み取りながら独自開発した送信機と、モバイルアプリ「Airpeak Flight」。
実際に送信機を持ってみると、手指のフィット感と操作性の高さが実感できる。指を置く位置には、カスタマイズ可能なボタンが4カ所設けられており、機体、カメラ、ジンバルを好みのボタン位置に振り分けられる。操作用スティックは、ラジコン機器専門メーカーとして知られる双葉電子工業の製品を使用するなど、使いやすさへの徹底的なこだわりが感じられる。
Airpeak Flightは、機体と送信機、カメラ、ジンバルを統合するアプリ。送信機のフォルダに取り付けたiPadかiPhoneでアプリを操作する。アプリ画面では、機体に搭載したカメラαからの映像がリアルタイムに表示される他、フライトモードの切り替え、飛行距離やバッテリー残量の確認などができる。撮影現場の要望を汲んで、機体操作とカメラ操作を別の人が担当できるデュアルオペレーションモードも備えている。
効率的な飛行計画を支えるシステム
また、機体操作を効率的に行えるようにするのがWebアプリ「Airpeak Base」だ。飛行プラン作成、過去の飛行ログ管理、機体やバッテリーの使用頻度の管理などが行える。
アプリのタイムライン上には、機体の位置(緯度・経度・高度)や速度の指定、ジンバルの向きや動画・静止画の撮影タイミングを設定し、飛行プランを作成する。直線的な軌道だけでなく、ベジェ曲線による滑らかな曲線ルートの指定も可能。アプリを操作した印象は、一般的に使用される動画編集ソフトに近いというものだった。
Airpeak Base上で作成したルートを送信機に送ることで、自動飛行が可能になる。過去の飛行ログをもとに、飛行ルートとジンバル、カメラの動きを自動で再現する機能もある。
課題を克服し、さらなる高みへ
この他にも同社のドローンサービスでは、Airpeak Baseの全ての機能を利用できるクラウドサービス「Airpeak Plus」や保証サービス「Airpeak Protect Plan」などを用意している。まさに、ハードからソフトまでがトータルにデザインされたドローン開発といえるだろう。
もちろん現時点で課題はいくつかある。例えば、既にSNSなどでも話題になっている飛行時間の短さ(カメラ搭載でわずか12分)は、真っ先に解決してほしい部分だろう。ただ、この点については、先の基調講演で川西氏より大容量のバッテリーを提供するように準備を進めているとの発言があった。
今後ソニーは、映像クリエイター、システムインテグレーター、産業パートナーなど幅広い領域で「プロフェッショナルサポーター」との共創活動を推進し、ドローンの可能性を追求していくという。ドローン開発の最後発とも呼べるソニーの巻き返しが楽しみである。
【訂正】記事の初出時に、操作用スティックの製造メーカーを三和電子機器製としていましたが、正しくは双葉電子工業製です。上記記事は訂正済みです(2021年7月12日11時40分)。
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