廃食用油などが原料のバイオディーゼル燃料の共同研究を開始、西松建設ら:産業動向
西松建設と佐賀市は、同社が佐賀市に保有する清掃工場に設置した「次世代型バイオディーゼル燃料製造プラント」で生産される高品質バイオディーゼル燃料の実用化を目指し、共同研究を進めている。西松建設では、2021年度末までに、プラントでの製造安定性や品質の安定性を確認する。その後、建設機械、市営バス、ごみ収集車への高品質バイオディーゼル燃料の導入を推進し、廃食用油などを高品質バイオディーゼル燃料へ精製する新たな技術の実用化を図る。
西松建設と佐賀市は、同社の佐賀市清掃工場に設置した「次世代型バイオディーゼル燃料製造プラント」で生産される高品質バイオディーゼル燃料の実用化を目指し、共同研究を開始したことを2021年4月26日に発表した。
製造した高品質バイオディーゼル燃料が酸価と引火点以外は軽油と同品質
西松建設は、2016年3月30日に、環境大臣から業界の環境先進企業として「エコ・ファースト企業」の認定を受け、2019年6月には、脱炭素社会の実現を目指し、「2030年度CO2排出量ネットゼロ」という目標を掲げ活動を開始している。
具体的には、CO2の排出量を削減するために、これまで、カーボンニュートラル燃料「BDF(FAME)※1」の建設機械への導入を進めてきた。しかし、品質の安定性、潤滑性などに課題があるため、BDFとは異なる付加価値が期待される「次世代型バイオディーゼル燃料(高品質バイオディーゼル燃料)※2」の実用化を見据えた研究開発や普及について検討していた。
※1 BDF(FAME):使用済み天ぷら油などの廃食用油に、メタノールとアルカリ性の薬品(触媒)を加え、60度前後で加熱・混合し、化学反応(エステル交換反応)により得られるバイオディーゼル燃料(脂肪酸メチルエステル)
※2 高品質バイオディーゼル燃料:廃食用油などに含有している脂肪酸に対して、触媒を用いて脱炭素分解を行うことで、炭化水素油にする技術(HiBDプロセス)
一方、佐賀市では、2010年に環境都市宣言を行い「地域循環共生圏」づくりを推進し、限りある資源を有効活用しつつ、融通し合うネットワークを築くために市民や企業と共に取り組んでいる。その一環として、市営バスなどでBDFを利用していたが、2004年式以降の車両には対応できず、使用できる車両が限定されていた。
上記の課題を解決するために、西松建設は佐賀市と公募型プロポーザル方式で共同研究契約を2020年10月30日に締結し、廃食用油などを軽油と同品質の「高品質バイオディーゼル燃料」へ精製する新たな技術の社会実装と実用化を目的に研究をスタートした。
共同研究では、2020年3月に佐賀市清掃工場にプラントを設置し、プラントに関する調整等を実施した後、2021年1月に製造したバイオディーゼル燃料のJIS規格(軽油)への適合の確認と成分分析試験を行った。結果、酸価および引火点については製造に関する調整が必要だが、その他の項目ではJIS規格値を満たし、軽油と同品質であることが判明した。BDFで課題となっている潤滑性に関しても、軽油と同様の品質であることが分かった。
現在、プラントでは、次世代型バイオディーゼル燃料の製造装置が、短期・長期運転時に安定性があるかをチェックするために、品質の変化やばらつきについて確認して、製造収率と製造コストについても検証している。また、製造した高品質バイオディーゼル燃料を建設現場の建機へ使用し、走行性能、動作性能、燃費性能などにより実働車両への適合性を評価するとともに、実際に走行する市営バスやごみ収集車での高品質バイオディーゼル燃料の活用も進めている。
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