現場の消費電力40%削減に成功、エネルギーマネジメントシステム「N-TEMS」:山岳トンネル工事
西松建設では、2030年度に事業活動から発生する全てのCO2排出量をネットゼロ(創エネルギーと組み合わせ消費エネルギーをゼロにすること)とするために、LED仮設照明や軽油代替燃料の採用、省エネ型建設機械の活用などに取り組んでいる。この活動の一環として、山岳トンネル工事を対象に、使用電力量を年間約92トン削減することを目標に掲げる。目標達成のため、機械・設備の使用電力を抑えられるエネルギーマネジメントシステム「N-TEMS」を開発した。
西松建設は、山岳トンネル工事における使用電力量をリアルタイムで把握し、坑内環境を最適に保ちつつ、現場で働く機械・設備の電力量の削減を図れるエネルギーマネジメントシステム「N-TEMS(Nishimatsu Tunnel Energy Management System)」を開発した。
既に、国内の3現場4トンネルで、N-TEMSを適用し、導入前と比較して換気設備の消費電力を約40%削減することに成功した。
換気ファンや集じん機を自動制御
N-TEMSは、トンネル現場で作動する機械・設備のデマンド値(瞬時電力値)をモニターする「監視システム」や工種に合わせて換気ファンと集じん機の風量をコントロールする「制御システム」、計測された各種データをクラウドサーバ上で一元管理する「総合管理システム」で構成されている。
監視システムは、現場の機器に取り付けたデマンド値の計測装置から消費電力などの情報を取得し、クラウドサーバにアップロードする。同時に、機器の利用状況から工種を特定し、制御システムに指令を送る。
制御システムは、換気ファンと集じん機の風量を工種ごとにあらかじめ設定された最適な風量に調整する。火薬後ガスと粉じんを効率的に捕集するために集じん機は、発破完了後15分間は最大風量で自動的に吸い込む。また、坑内粉じん濃度が、1立方メートルあたり3ミリに定めた規定値以上にならないように、粉じん濃度測定結果を優先させた制御を行う。
総合管理システムは、各機器の消費電力などのデータを一元管理することで、効率的なエネルギーマネジメントを進め、現場の消費電力の削減に貢献する。
加えて、各現場から集められたクラウド上のデータを本社や支社、技術研究所などで、リアルタイムに確かめられる体制を構築し、現場への適切な指示を後押しする。
今後、西松建設が施工中の全トンネル現場への導入に向けて、効果の検証とシステムの改良を推進。IoTセンサーをシステムに組み込み、機械や設備の制御による電力量削減の精度を高めていく。
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