ビルメンで役立つ1ID月額300円の情報共有SaaS、活用方法をKMW・染谷代表が解説:ビルメンの情報共有を変革する新たなSaaS
ナレッジ・マーチャントワークスは、ビルメンテナンス業や清掃業といったサービス産業の生産性を向上するために、業務支援SaaS「はたLuck」を開発し、2019年6月にローンチした。
国内では、ビルメンテナンス業や清掃業、運輸業、小売り業、飲食業を含むサービス産業の生産性が低くく、作業効率を改善する余地が大きい。日本生産性本部が2016年に発表したデータによれば、日本のサービス業は、米国のサービス業と比較して、生産性が半分以下となっている。さらに、国内のサービス業は、国内総生産(GDP)の約55%を占め、就業者数は約3700万人に上り、労働者全体の約56%が働く産業だが、非正規の従業員が多数おり、賃金が上昇しにくい傾向にある。
こういった問題の要因は、サービス業を営む企業の多くが多店舗経営で、本部からの指示を各拠点の従業員に伝えられず無駄が少なくない点や業務ツールが紙、FAX、個人用のLINEで行動がデータ化されない点、人材の育成に投資がされない点が関係している。
上記のような課題を解消するために、ITベンチャーのナレッジ・マーチャントワークス(KMW)は、サービス業向け業務支援SaaS「はたLuck」を開発し、2019年6月にローンチした。
はたLuckの機能やビルメンテナンス会社での活用事例、今後の展開について、KMW 代表 染谷剛史氏に聞いた。
業務で必要な情報を学べる動画やPDFのマニュアルも添付可能
――はたLuckの機能とは?
染谷氏 はたLuckは、作業状況の可視化や情報共有に役立つアプリケーションで、使用に当たっては、業務用スマートフォン購入といった経費の削減を踏まえて、当社では従業員が個人で所有するスマートフォンにインストールし、個人のIDでログインして利用する方法「BYOD(Bring Your Own Device)※1」を推奨している。1ID当たりの利用料は月額300円で、雇用者が職場にWi-Fi環境を構築すれば通信費の負担も無い。
※1 BYOD:従業員が個人で所有しているスマートフォンやタブレット、ノートPCといった端末を業務でも活用することを指す
はたLuckの主な機能は、「タスク管理機能」や「トーク機能」「連絡ノート」「星を贈る」「学習する」「多言語翻訳機能」「シフト申請/作成」で、タスク管理機能では、本部からの指示を対象の従業員が実施したかを確かめられる。一例を挙げると、本部の社員が、タスク管理機能を用いて、「店舗の内観を撮影して欲しい」と対象の従業員に指示を出し、報告方法でテキストと画像を指定すると、スタッフが画像とテキストをはたLuckで本部の社員に送るまでタスク管理機能上でこの業務が完了していないことが表示され続けるため、完遂していない業務が一目で分かる。
トーク機能は、LINEなどのSNSと同様の操作感でチャットを通してコミュニケーションをとれるもので、はたLuckのオリジナルスタンプを使ってライトな意思疎通も図れる。連絡ノートは、トーク機能で流れてしまいがちな情報を同僚や本部の社員に周知するもので、共有する範囲や内容に応じてタグを付けられ、職場内の情報を整理するのに役立つ。さらに、画像の投稿に応じているので理解しにくい情報も写真で伝えられる他、「見ましたボタン」という機能で連絡ノートを既読した人と未読の人を把握することもできる。
星を贈るは、連絡ノートの内容に星を付けられる機能で、メッセージも添えられ、気持ちの良い職場作りに貢献する。贈られた星に対して、拍手のスタンプでリアクションもとれるため、同僚の頑張りや優れた行動を職場全体で共有しやすい。
学習するは、PDFや画像ファイル、動画の形式でマニュアルを掲載可能なため、スタッフに学べる環境を提供し、教育時間の削減を実現する。多言語翻訳機能は、Google翻訳と連携してはたLuckへの投稿文をさまざまな言語に翻訳するため、外国籍スタッフの育成に有効だ。業務指示や連絡を多言語に翻訳して紙に印刷し、配布するコストを減らせる。シフト申請/作成は、オプション機能で、従業員からはたLuckを介して提出された希望の勤務日を自動で集計し、簡単な操作でシフトの調整と編集を行える。
――アイングの活用事例と今後の展望
染谷氏 ビルメンテナンス会社のアイングでは、各現場で勤務するスタッフのログイン率や連絡ノートへの投稿数、内容を分析し、作業の実行力と情報共有の相関関係を調べ、はたLuckの効果的な活用方法をフォーマット化し、各拠点に共有している。また、学習するの機能でマニュアルのPDFと動画をいつでも見られる環境を構築するとともに、同僚とトーク機能でチャットしやすい環境を作り、新入社員が孤独を感じにくくし、離職率を減らしている。
今後、当社では、クラウドカメラとの連携機能をはたLuckに搭載し、遠隔地でも現場の状況を見渡せるようにする。加えて、現在、はたLuckは、2000社で採用されており、IDの購入数は2万6000IDに達しているが、2021年度内には15万IDの導入を目指し、2023年までには50万IDの導入を目標に展開していく。
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