ビルメンテナンスのDX化を実現するビル管理統合システム「DBM」とZETA通信:建設業で効果的なZETA通信の基礎や最新動向(3)(1/2 ページ)
本連載では、ICTシステムに関する企画やコンサルティング、設計、構築などを手掛けるNECネッツエスアイ ビジネスデザイン統括本部 デジタルタウン推進本部 事業推進マネージャー 川崎孝史氏が、通信規格「ZETA」の基礎知識や最新動向、建設業での活用方法を紹介する。最終回の第3回は、ビルメンテナンスのDX化=スマートビルディングに不可欠なビル管理統合システムDBMやその先に見据えるスマートシティー・スーパーシティー構想について解説する。
前回までのおさらい
第1回では、通信規格「ZETA」の基本概要や最新動向、建設業での活用例を採り上げた。ZETAの概要や通信業界での位置付け、特徴的な機能を踏まえ、ZETAの大きな特徴であるマルチホップ機能が屋内利用で有利であることと、ZETA閉域プラットフォームサービスで手軽に利用できることに触れた。第2回では、コロナ禍におけるIoT/LPWA通信の存在意義、そしてZETAのパッケージやビル敷地内での利活用方法、マルチコネクティビティの必要性を説いた。連載最終回である第3回では、ZETAでスマートビルディングを実現するための活用方法について解説する。
施設、設備管理への取り組み
第1回の記事では、ZETAは中継器を生かしたマルチホップ機能により、経路冗長効果を発揮するため、屋内利用に適していると説明した。筆者は複数のLPWA通信を扱っているが、やはりビルや屋内での通信は、中継器を使えるZETA通信が最適だと考える。ZETAアライアンスでは、こうした特徴を効果的に活用し、以下のような領域でZETA通信の活用を推進している。
- 図書館、博物館などの公共施設:書棚や展示物周辺の温湿度や来館者滞留時間のモニタリング
- スポーツクラブなどの民間施設:機械設備や流量メーターの監視
- オフィスビル:会議室、喫煙所、機械室などのモニタリング
ZETAのもう1つの強み
ここでZETAの強みが発揮できる屋外での利用シーンを1つ紹介する。それは、キロ単位の広大な敷地を備える施設での利用である。公衆サービスは圏外なことが多いこのような広大な敷地でも、ZETAの自営ネットワークとマルチホップ機能により、通信手段を確保できる。また、中継器によるメッシュ機能で、地形の影響や天候・季節の環境変化にも、柔軟に対応し、通信経路を維持することが可能だ。筆者は複数の広大な施設での電波伝搬調査及びセンシングシステムの構築に携わったことがあるが、横の広がりだけでなく、高さ方向の広がりにもZETAはかなり強い印象だ。製造業や港湾業務の敷地、林業、ゴルフ場、牧場、ソーラー施設などでの活用も期待できる。
ビルメンテナンスの課題
さて、2020年度初頭の緊急事態宣言発令時に、経済産業省より「緊急事態宣言時に事業の継続が求められる事業者」として、ビルメンテナンス事業が例示された。つまり、コロナ禍でも市民の生活に必要不可欠な事業であると位置付けられているわけだ。
その半面、さまざまな課題を抱える事業環境でもある。全国ビルメンテナンス協会が2020年に発行した「ビルメンテナンス情報年間2020」によると、ビルメンテナンス業界における経営課題の上位は、「現場従業員が集まりにくい」「現場従業員の若返りが図りにくい」とレポートされており、従業員不足は業界の最重要課題の1つとなっている。
また、従業員確保の難しさ、価格競争市場、感染症対策の必要性を鑑(かんが)みると、ビルメンテナンスの省力化が課題解決に必要な施策の1つだと考えられる。しかし、ビルメンテナンス情報年間2020の調査報告書では、「既存の業務の効率化(ICT化、標準化など)」や「情報技術(AI、IoTなど)の活用」を実施している割合は20%以下とレポートされている。事実、現場では紙の点検表にペンでの記録が主流で、かつ属人的な業務体制となっており、これら施策の導入余地はまだ多くある。ビルメンテナンス業務は、労働集約型であるが、with/afterコロナの観点からも、人手に依存する範囲を減らしていく仕組み作りが急務であろう。
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