ジョンソンコントロールズが考える“BAS”を進化させたスマートビルの未来像:BAS(1/2 ページ)
ブルジュ・ハリファや上海タワー、あべのハルカスなど、世界を代表する90%以上の高層ビルに、ビル・オートメーション・システム(BAS)を提供しているジョンソンコントロールズ。次の展開として、AIやIoT技術を活用し、スマートビル・スマートシティーを実現する未来のBASを構想している。
ジョンソンコントロールズは2018年8月9日に記者勉強会を開催し、スマートビル・スマートシティーの最新動向と今後の展望を示した。
「自動最適制御」「ウエルネス」「生産性向上」でスマートビル実現
同社が提供しているビル・オートメーション・システム(BAS)「Metasys」は、施設内のさまざまなシステム・装置と緻密に連携しながら、管理・運用・解析・改善をサポート。特長として、Webベースによる管理やスマートフォンやタブレットでも操作できるシンプルで使いやすいインタフェースがある。世界標準のオープンプロトコル「BACnet」「Modbus」「DALI」といった空調設備やセンシング機、照明などを「Metasys」とつなぐネットワークエンジンを備え、他社製品にも対応する拡張性の高さもある。メーカーに縛られることなく、最適な設備や機器を組み合わせてビルに導入できるため、ライフサイクルコストの最適化につながる。
これからのMetasysの活用を考えたときに、将来的な社会課題や需要に応じる必要があり、そのためのキーワードとして「自動最適制御」「ウエルネス」「生産性向上」の3つが挙げられるという。
「自動最適制御」が必要な背景には、エネルギー供給設備を理解する技術者の不足と、オフィスビルの消費電力のうち43%を空調設備が占めてしまうという2つの課題がある。これらを自動最適制御によって解決するため、グローバルでは既に導入されている「セントラルプラントオプティマイゼーション(CPO)」を国内でも導入する。プランニングやオペレーションのツールで、光熱水費や負荷を計測し、ビルエネルギー供給設備のデータと連携して最適なコストを予測する。
CPOの事例で、米スタンフォード大学をエネルギー効率の高い研究施設にするプロジェクトを紹介。同大学は、33km2(平方メートル)もの広大な敷地に、700以上もの施設を有している。プロジェクトは2011〜15年にかけて、総工費4億ドルを投資し、2050年までのエネルギー需要を考慮して熱供給システムの改修を行った。結果、温室効果ガスは68%削減、水消費量は15%削減、オペレーションコストに至っては2050年までに4億2000万ドルのコストカットが計算されている。
自動最適制御を目指すためのもう一つのアプローチが、2018年7月10日に発表されたマイクロソフトの機械学習「Microsoft Azure Machine Learning」を利用した空調向けの「不具合検知(FDD)システム」。これまでのビルメンテナンスでは、空調が稼働している間に点検員が確認していたが、作業者のスキルに依存することや執務中の天井内作業が困難なこと、時間帯や季節を変えたさまざまな条件でのテストができないことなどがネックとなっていた。
新たに開発したシステムは、ビルの情報をクラウドに上げ、社内に蓄積された分析スキルを機械学習化し、自動で分析する。室内の快適環境を損なうような深刻な動作不良に陥る前に不具合を察知できる。不具合検知(FDD)システムのサービス提供は、日本が最初で2018年9月からスタートする。
キーワードの2つ目、「ウエルネス」は、働き方改革の高まりを受けたもので、無線技術を活用した環境センシングにより、より働きやすい環境を提供するシステム。
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