22.86mmの狭小空間に応じる電力設備用の点検ロボ、東工大発ベンチャーHibotがGEと提携:ロボット
HiBotは、発電機検査ロボットでGEとライセンス契約を結び、ロボットおよび周辺サービスを一体的に提供する「RaaS事業」で電力業界の保守点検領域に本格参入した。
東工大発ロボベンチャーのHiBot(ハイボット)とGeneral Electric(ゼネラル・エレクトリック)は2021年5月、発電機検査ロボットの事業化についてライセンス契約を締結した。今回の締結で、これまでHiBotが注力してきた機械売りだけではなく、クラウド上でのAI検知やリモートコントロールなど、顧客の必要な時だけ必要なサービスも提供する「RaaS(Robot as a Service)事業」を新たに電力業界にも展開していく。
22.86mmの狭小空間に対応する点検ロボ
HiBotは、ターボ発電業界で世界有数のシェアを誇るGeneral Electric Technologyの協力の下、狭小点検ロボット「GEEP(GEnerator Exploration Platform)」を開発した。GEEPは発電機内部のローターを取り外すことなく点検が可能で、ハイボットが培ってきた狭くて過酷な環境下での可動性や筐体のコンパクト化、独自開発の電子機器といった最新技術が詰め込まれている。HiBotが提供しているインフラ設備の点検・保守のデータ処理・管理・統合を可能とするデジタルプラットフォーム「HiBox」とも連携する。
GEEPは22.86ミリ(0.9インチ)という小さな隙間からも侵入し、最大150ミリ(6インチ)の広い空間にも適応し、現在、電力業界で使用されている多くの発電機に対応する。
また、高解像カメラを搭載しているため、詳細な視覚検査が可能。さらに、自立走行機能を備えており、GEEPが自動運転している間は、作業員が別の業務に従事することができる。GEEPは発電機内部の楔(くさび)やステーターの品質検査に応じられるように、打音検査用のタッピングセンサー、固定子鉄心の絶縁劣化診断を行うElCid(Electromagnetic Core Imperfection Detection:電磁式鉄心欠陥検出)といったセンサーが取り付けられる。
他の点検ロボットと比較すると、発電機のローターとステーターの表面を2Dまたは3Dの連続的マップを生成するのが特徴で、高解像カメラやローカリゼーションシステムを用いて、発電機内部にある欠損箇所の正確な位置を特定し、一目でインフラ設備の全体像を可視化する。
東京パワーテクノロジー 事業開発部長 阿久津信男氏は、「GEEPの移動機構と操作性は、とくに評価している点で、効率的なロボット検査が無理なく導入できる。点検のために必要なセンサーがGEEPに実装され、新しい発電機検査方法を創造することを期待している」とコメント。
HiBot代表取締役社長 ミケレ・グアラニエリ(Michele Guarnieri)氏は「20年かけて培ったノウハウを厚さ20ミリのロボットに詰め込んでおり、これまで行われてきた発電機の点検作業を改善する。われわれの日常生活は、発電所から供給される電力によって支えられており、今回のライセンス契約の締結で、発電機の点検作業がより早くより安全で、より効率的に行われるようになる」と話す。
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