安藤ハザマとイクシスの「ひび割れ検査ロボット」現場適用、4.5万m2の床面を自動検査:ロボット
安藤ハザマとイクシスは、大空間構造物の床面を対象に、ひび割れ検査を自動化する自律走行式ひび割れ検査ロボットの開発を進めており、このほど実現場に適用した。その結果、幅0.1ミリ以上のひび割れを色分けして検出することができ、ロボットによる省人化とともに信頼性の高い検査が行えたという。
安藤ハザマとイクシスは、開発を進めてきた「自律走行式ひび割れ検査ロボット」を活用した床コンクリートの新しいひび割れ検査手法を確立し、竣工時の床面ひび割れ検査に適用して、2021年5月に効果を確認したと明らかにした。
操作者1人7.5時間で、約4500平方メートルを検査
適用した現場は、4階建ての物流施設の新築工事で、1〜4階の倉庫部分(延べ床面積約4万5000平方メートル)に施工者検査として全面適用。ロボット2台とモニタリングシステムを用い、自律走行による床面の撮影、AIによるひび割れの検出、検出データの図面化を行った。
その結果、床面はひび割れが非常に少ない状態だったが、目視検査では発見が難しい微細なひび割れを本ロボットでは確実に検出。目視検査では、検査者の技量や経験で、ひび割れ幅の計測や位置、形状の記録にバラツキが発生することが少なくないが、ロボットでは、幅0.1ミリ以上のひび割れを0.1ミリ単位で色分けして検出した。
自己位置推定と地図構築を同時に行うロボット技術「SLAM」により、正確な位置も記録するため、実際の状況と誤差が少なく信頼性の高い検査記録を作成。検出精度と検出頻度ともに、ロボットでの自動検査の優位性を確認した。
ロボット検査では、検出図や検出画像の他、検査範囲の床面全ての画像も電子データとして記録。将来ひび割れが発生した場合など、竣工当時の状況と比較して、経年変化や発生原因の分析に役立てられる。
ロボットの操作は、操作者1人でロボット2台を使用し、1日およそ実働7.5時間で約4500平方メートルの範囲を検査したという。仮に、同数量を目視で検査する際は、測定と記録で2人が必要で、そのため、ロボット検査は目視検査に比べ半分の労力に削減し、生産性が2倍になると証明されたことにもなる。
今回は、現場職員や協力会社の作業員がロボット操作も行った。安藤ハザマでは、専門知識が無い者でも扱え、検査者の技量に左右されず、精度の高い検査が可能になることで、労務不足を解決する手段の一つにもなると見ている。
今後は、ロボットを活用した新しい検査手法を安藤ハザマ施工の物流施設や工場などのひび割れ検査に順次導入し、検査業務の効率化を図り、現場の生産性向上を目指していきく。
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