2030年建築の「森林破壊ゼロ」に向け、木材調達の方針をダイワハウスが策定:SDGs
大和ハウス工業は、2030年に木材調達での森林破壊ゼロを実現すべく、サプライヤー選定の条件やトレーサビリティーが把握できる木材のみを使用すると表明した方針を公(おおやけ)にした。
大和ハウス工業は2021年6月16日、2030年までに建設する建物で木材調達に伴う森林破壊を根絶するため、4つの方針をとりまとめ公表した。
森林破壊ゼロを掲げるサプライヤーのみから木材購入
大和ハウス工業グループは環境長期ビジョン「Challenge ZERO 2055」に基づき、創業100周年となる2055年までに、グループ、グローバル、サプライチェーンのそれぞれで「環境負荷ゼロ」実現を目指している。
そのうち、重点テーマの一つとして、自然環境との調和を掲げ、2030年までに建てる建築物で木材の調達に伴う森林破壊をゼロにし、2055年までには建築以外も含めた全事業で材料調達による森林破壊を根絶することを標榜(ひょうぼう)している。
今回とりまとめた方針では、サプライヤー選定の条件で、「森林破壊ゼロを掲げるサプライヤーからの木材購入」や「原産国での先住民や労働者の権利、安全に配慮した木材を取り扱うサプライヤーからの調達」などを示した。
具体的には、サプライヤーに対し、2030年までに森林破壊ゼロの方針策定を要請し、方針に沿わないサプライヤーからの木材調達は原則禁止する。同様に、原産国の人権侵害防止や安全性重視のため、労働や人権に関する方針の提示も求める。
また、適切な方法で伐採された木材の利用を推進するため、生産から消費までの過程が追跡または確認ができる木材のみを調達していくことも明示している。木材調達調査の対象は、これまでの構造材や下地面材、桟木、フロア材に加え、型枠合板パネルや主要設備、建具、クロスも追加し、対象範囲を拡大する。
大和ハウス工業が今回、森林破壊ゼロを掲げた方針を策定した背景には、近年グローバルでSDGsと事業を統合した企業経営が避けて通れない課題となっていることがある。
SDGsの観点で林業市場をみると、世界の森林は毎年、東京都の約45倍の面積となる約1000万ha(ヘクタール)が減少しており、1990年から2020年までの間に、約4億2000万haが消失。伐採により森林に蓄えられた二酸化炭素が大気に放出されることで、地球温暖化が加速する要因にもなっている。そのため、大和ハウス工業は温室効果ガス削減に関する国際的イニシアチブ「SBT」に加盟する企業として、サプライチェーン全体でさらなる環境保全を推進すべく、木材調達における森林破壊ゼロ方針を策定するに至った。
これまで2010年10月から進めてきた森林破壊ゼロに向けた木材調達の取り組みでは、年1回、サプライヤーに対して木材調達調査を実施。評価基準に基づき、S・A・B・Cの4段階で評価し、森林管理の国際機関による認証を受けた木材や再生木材などの利用を全社で推進している。その結果、2015年度にはリスクが最も低いと判断されるSランクの木材比率は約87.6%だったが、2019年度には約94.3%まで向上したという。
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