afterコロナ後「絶滅恐竜」にならないための建設DX、日揮HDの「ITグランドプラン」や東芝EVの「全工程BIM活用」:COVID-19(3/5 ページ)
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、一気に進展したここ最近の働き方改革では、各社ともに、在宅勤務やテレワークの導入だけに注目されることが多い。しかし、その先のafterコロナ後の世界では、ワークプレースを柔軟に選択できる“ハイブリッドワーク”が基軸の考えとなり、実現に向けた業務の効率化や自動化といったデジタル変革は、建築やエンジニアリングの分野でも、避けては通れないものになるだろう。オートデスク主催のセミナーから、IDC Japanによるハイブリッドワークの潮流や日揮ホールディングスの工期2分の1を掲げた全社IT推進、東芝エレベータの維持管理段階も含めたBIM活用などの実例から、如何にしてafterコロナの市場を生き抜くか、ヒントを探った。
危機を乗り越える道筋、日揮HDのDigital Journey
日揮ホールディングス Chief Digital Officer(CDO) 花田琢也氏は、「日揮グループの“Digital Journey”とは【ITグランドプラン2030】」と題し、日揮グループがITグランドプラン2030を策定した背景と、「ITグランドプラン2030 Road Map」、具体的な開発イメージをプレゼンテーションした。ここからは、花田氏のプレゼンテーションを紹介する。
2019年10月1日に持株会社体制へ移行し、新たな経営体制となった日揮ホールディングスは、石油や天然ガスなどのプラント(工場)建設を請け負うプラントエンジニアリングの国内最大手だ。
数年前、当時の日揮ホールディングスの経営陣は、重要取引先である米エクソンモービルから挑戦的な助言を受けた。「2030年には、工数は3分の1、工期は2分の1になるだろう。こうしたトレンドに乗り遅れば、日揮は将来、このマーケットからキックアウトされ、最後にはダイナソー(恐竜)になって絶滅する」こういった衝撃的な言葉の後に、「危機を乗り越えるには、Digital Journey(デジタル化への取り組み)しかない」というアドバイスを受けた。日揮ホールディングスの経営陣は帰国後、直ちにCDOの花田氏に指示を出した。それは、2030年にどのような企業になっていなければいけないか、工数は3分の1、工期は2分の1というゴールを設定し、バックキャスティングをしたグランドプランを作れというものだった。
ほぼ自力で描いた「ITグランドプラン2030」
花田氏は、2030年時点でビジネスの中核を担う30代と40代を中心に、ITに偏らず事業系の従業員も加えた30人のプロジェクトチームを編成。2018年4月からの半年間、キーとなる技術や業界内の現状をインド、中国、ヨーロッパ、アメリカで現地調査した。オートデスクが提供しているAI設計やジェネレーティブデザイン、デジタルツイン、3Dプリンタなどの知見も採り入れて、ほぼ内製で、ITグランドプラン2030を策定。ITグランドプラン2030は、100ページにも及ぶ冊子となったが、その内容を分かりやすく取り纏(まと)めたのが、ITグランドプラン2030 Road Mapだ。
ITグランドプラン2030 Road Mapは、米Autodeskの知見を参考にとりまとめた「AI設計」「デジタルツイン」「3Dプリンタ・建設自動化・新素材」「標準化・Module化したプラント」「スマートコミュニティー」の5つのイノベーションプログラムで構成されている。
このうち「AI設計」は、設計自動化によるエンジニアリング能力の革新。プラント配置の最適設計や機器類の自動選定、革新的なプロセス機器の自動設計を目指すもので、強化学習やジェネレーティブデザインなどのAI技術を活用し、シニア技術の形式知化を行い、単純なチェック作業などを自動化する。
「デジタルツイン」は、計算機内の複製(デジタルツイン)のことで、プロジェクト自体のデジタルツインを構築し、将来予測と意思決定に活用できるようにすることだ。
「3Dプリンタ・建設自動化・新素材」は、3Dプリンタや建設自動化による建設現場での劇的な改善のこと。建設現場での自動機械・ロボットの活用、構造材用大型3Dプリンタを導入し、さらに新素材を開発し、設計から工事までのリードタイムの劇的な短縮を見込む。
「標準化・Module化したプラント」は、従来の個別設計から脱却し、標準化とモジュール化を最大限活用することで、プラント設計・調達・製造の生産性を向上し、大幅な納期短縮の実現を掲げる。
「スマートコミュニティー」は、日揮グループ製造業の工場スマート化を手始めに、建設現場のスマート化を経て、内外のインフラプロジェクトへのスマート技術展開を図る。
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