afterコロナ後「絶滅恐竜」にならないための建設DX、日揮HDの「ITグランドプラン」や東芝EVの「全工程BIM活用」:COVID-19(4/5 ページ)
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、一気に進展したここ最近の働き方改革では、各社ともに、在宅勤務やテレワークの導入だけに注目されることが多い。しかし、その先のafterコロナ後の世界では、ワークプレースを柔軟に選択できる“ハイブリッドワーク”が基軸の考えとなり、実現に向けた業務の効率化や自動化といったデジタル変革は、建築やエンジニアリングの分野でも、避けては通れないものになるだろう。オートデスク主催のセミナーから、IDC Japanによるハイブリッドワークの潮流や日揮ホールディングスの工期2分の1を掲げた全社IT推進、東芝エレベータの維持管理段階も含めたBIM活用などの実例から、如何にしてafterコロナの市場を生き抜くか、ヒントを探った。
日揮HDが試みる「P×BIM」と3Dプリンタの宇宙開発
ロードマップの縦軸は上にいく従って、難易度が上がっていく。横軸は、直近の課題であるキャパシティーアップ、生産性や遂行能力の向上のゾーンから品質向上・リスク低減のビジビリティ向上ゾーン、そして新しいデザイン・新たな価値の提案をするクリエイティブゾーンで設定。縦横2軸で5つのイノベーションの課題をプロットし、2022年までの短期的な目標から2026年までの中期目標、そして2030年を最終年とする長期目標を定めている。
花田氏はとくに最近注力している分野として、20年以上前から取り組んできた3Dモデルでの設計と、約7年前から医薬品のプラントで活用してきたBIMを融合させて、新たな価値を創造する「P(Plant)×BIM」のキャッチフレーズで、3Dモデルを活用する用途の深堀りをしているとした。
また、日揮ホールディングスでは構造材用の大型3Dプリンタを購入し、第1段階として国内でのチャレンジを積み重ね、海外の大型プラントで導入し、将来は3Dプリンタによる宇宙でのプラント建設という壮大な計画も抱いていることを明かした。
「DXと言うと、魔法のギアがあってスーパーハイウェイを疾走するようなイメージを持たれている経営者の方は少なくない。実態は一般道を抜け道を探り、橋を架けながら、進んでいくのがあるべき姿。そのため、デジタルに関わっている人間だけでなくユーザーも含めた全員で、DXに対峙(たいじ)していくことが近道になるだろう」(花田氏)。
東芝エレベータが目指す「Elevator as a Service(EaaS)」
東芝エレベータ EaaS 推進プロジェクトマネージャー 古川智昭氏は、「東芝エレベータにおけるBIMの推進と未来の働き方」と題し、東芝エレベータが進めるEaaS(Elevator as a Service)の取り組みからBIM(Building Information Modeling)の活用、エンジニアリング改革の推進とライフサイクルを通した活用について解説した。
東芝エレベータは1967年に創業、50年以上もの長きにわたり、昇降機に関する開発・設計、製造、据え付け、保守業務を遂行してきた老舗企業だ。東芝エレベータを含む東芝グループでは、リアル空間(Physical)で製品を開発・制御し、その結果をデータとして収集し、デジタル空間(Cyber)で分析したり、活用しやすい情報や知識に置き換え、Physical側にフィードバックすることで、付加価値を創造するという「Cyber Physical Systems(CPS)」の構築を標ぼうしている。
CPSテクノロジーは、東芝グループが幅広い産業分野で培ってきた知見と、デジタル領域の先進技術を合わせ、高い評価を得ているAI技術群をコアに、デジタルの先端領域での新たなサービスを展開するものへと進化している。
例えば、発電所オペレーションの最適化やFactory IoT、リテール統合プラットフォームの他、データマイニングによる製品不良解析や電力需要予測、画像セグメンテーション、複数カメラ間の人物対応付けなど。東芝エレベータでは、CPSテクノロジーを活用して、BIMを顧客と共有してライフサイクルをスルーした価値提供や人々のライフスタイルを支える昇降機を目指す、「Elevator as a Service(EaaS)」の実現を目標に据えている。EaaSは、これまで安全かつ安心な移動手段であるエレベーターの提供にプラスして、安心と生活という観点にもスポットを当て、利用者やビルオーナーに対する各種サービスを提供していくというものだ。そこで、キーとなる技術が“BIM”だ。
BIMを活用した東芝エレベータの働き方改革
東芝エレベータでは、2018年度まではBIMを一部で導入していたものの、当時はまだ手作業で設計を進めることが多く、本格的にBIMに乗り出したのは2019年度。建築性能や環境性能のシミュレーション、ビルオーナーや建設会社とのイメージ共有、事前の段取り確認、設備の整合性チェックといったBIMの専用アプリを整備し、設計作業を自動化するなどの設計合理化に着手した。
2021年度には、クラウドシステムを開発し、データ連携して、施主やゼネコンとのイメージ共有による設計・施工の合理化も進めてきた。今後は、BIMデータを設計から製造、施工、保守、運用まで、各ライフサイクルの段階で一貫して活用することを目標に定めている。
社内外でBIMモデルを一元的に共有することができるようになれば、建築計画、昇降機営業、昇降機設計・施工、それぞれの業務で同じイメージを共有することができる。さらに、独自の設計システムで作成したBIMモデルと、図面の自動生成機能や製造部門、BOM(部品表)とを連携させることで、製造図面の設計レスや3Dモデルで事前のアタリ確認などの手戻り防止につながり、設計段階での前倒し“フロントローディング”が実現する。
こうした業務の自動化及び省力化を通じ、結果として業務時間の短縮がもたらされ、延いては新たな付加価値の提供、働く場所や働き方そのものをも変える“エンジニアリング改革”をBIMの先に見据えている。
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