検出精度8割以上で目視点検に比べコスト半減、大成建設の画像解析技術にAI検出を追加:AI
大成建設が運用している産業用ドローンと画像の抽出技術を組み合わせたひび割れ点検技術「t.WAVE」に、AIを活用してひび割れを自動検出する機能が追加された。現場での実証実験では、これまで人の目で行っていたひび割れの判別(トレース)作業が自動化されたことで、作業時間の短縮に加え、目視点検に比べてコスト半減の成果も得られたという。
大成建設は、コンクリートひび割れ画像解析技術「t.WAVE(ティー・ドット・ウエーブ)」に、AIを用いたひび割れ自動検出機能を付加したことを2021年3月に公表し、実証実験ではひび割れ点検に要する作業時間の短縮と費用削減につながることが証明された。
ひび割れ検出の検出精度は80%以上、トレース作業時間を90%減
国内で供用中の道路橋やトンネルなどの鉄筋コンクリート造のインフラ構造物は、既に50年以上経過しているものが多数存在し、老朽化が懸念されている。国土交通省では、2014年より、老朽化したインフラ構造物に対して、法令による定期点検を施設管理者に義務化した。だが、従来の点検は、点検員による近接目視で、高所では足場や高所作業車などを使用し、構造物の躯体表面に沿うように点検するため、仮設設備の設置・準備、点検、撮影、結果の図化などに多大な時間と費用を要していた。
課題解決の新たな点検手段とする大成建設のt.WAVEは、画像内にあるひび割れ検出後に線状の特徴範囲を画素単位で抽出する解析技術「ウエーブレット変換」を国内で初めて用い、2008年に開発。以来、30件以上のインフラ構造物で点検業務に活用するとともに、2014〜2018年は内閣府主管の戦略的イノベーション創造プログラムSIPに採択され、ドローン撮影画像への対応など、機能拡張と実用性の向上に取り組んできた。
今回、t.WAVEの有用性をさらに高めるため、AIによるひび割れの自動検出機能を追加し、実証した結果、人による目視作業を無くすことで、ひび割れ点検作業の時間短縮と費用削減がもたらされた。ひび割れ検出では、ひびの幅や長さを画像解析で高精度に数値化し、経年劣化の進行状態の把握に必要なひび割れ密度などを色彩化することで、定量的な評価が可能になる。
これまでt.WAVEでは、人が画像を見ながらひび割れを判別し、トレース作業を行っていたが、AIを活用することにより、ひび割れの判別が自動化されるため、点検作業の時間と費用の削減が図れる。仮に高架橋橋脚を対象とした実証の結果では、ひび割れの検出精度は80%以上で、ひび割れ検出のトレース作業時間を90%程度低減でき、目視点検に対する費用を50%削減したという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ドローン:“南海トラフ地震”を想定、国際航業やKDDIらが複数ドローンの完全自動航行を実験
国際航業、KDDI、ウェザーニューズは、災害発生時に複数のドローンやヘリコプターの航行を管理する飛行環境整備を目指し、「UTM(運航管理システム)」の機能検証を三重県志摩市で行った。 - ドローン:NTT東日本らがインフラ点検扱うドローン会社を設立、2021年度の売上目標は10億円
NTT東日本やオプティム、WorldLink & Companyが設立したNTTe-Drone Technologyは2021年2月1日に事業を開始する。今後、NTTe-Drone Technologyは、市場の成長が予測されているインフラ点検と農業の分野でドローンビジネスを展開し、2021年度中に売上10億円を目指す。 - 導入事例:「テラスモール松戸」に入出庫待ち渋滞を解消するAIシステムを導入、館内やHPで混雑を見える化
住商アーバン開発が千葉県松戸市で運営する大型ショッピングモール「テラスモール松戸」に、駐車待ち渋滞を車検知カメラとAI画像解析で解消する新サービスが導入された。 - 5G:ALSOKが羽田第3ターミナル駅で2021年1月に、5Gを活用した次世代の警備業務で実証
ALSOKと京浜急行、NTTコミュニケーションズは2021年1月に羽田空港第3ターミナル駅で、5Gを警備業務に活用して、地域課題の解決を実現するモデル構築と遮蔽(しゃへい)物の多い閉鎖空間でのローカル5Gの技術検証を開始する。 - ドローン:ドローン画像からインフラ構造物の高精度3Dモデルを形成
清水建設は、米国カーネギーメロン大学と共同で、インフラRC構造物の劣化予測技術の高度化を目的に、ドローン計測画像から、損傷情報も反映した高精度3Dモデルを形成するシステムを開発。インフラの維持管理や修繕計画の策定に貢献する。