「テラスモール松戸」に入出庫待ち渋滞を解消するAIシステムを導入、館内やHPで混雑を見える化:導入事例
住商アーバン開発が千葉県松戸市で運営する大型ショッピングモール「テラスモール松戸」に、駐車待ち渋滞を車検知カメラとAI画像解析で解消する新サービスが導入された。
千葉県松戸市八ケ崎の大規模商業施設「テラスモール松戸」で2020年12月10日、渋滞予測AIシステム「入出庫時間表示サービス」が開始した。大型ショッピングモール業界では初の導入だという。
車検知カメラで車数をカウントし、出庫時間予測を算出
入出庫時間表示サービスで、駐車待ち時間を可視化することにより、混雑のピークタイムを分散する。出庫予測時間が30分以上の場合は、車での来館者へ、館内で使用できる500円分の金券をプレゼントする期間限定キャンペーンも同時展開し、既存課題の解決と売り上げ向上の両面から、顧客の満足度アップにつなげる。さらに、施設前面に接する道路「けやき通り」と国道6号線交差点「小金消防署入口」の交差点改良に伴う渋滞解消にも、相乗効果を見込む。
導入の背景には、けやき通りがテラスモール松戸の開業前から渋滞が頻繁に発生している問題があった。そのため、開業計画から交通量調査などを行い、渋滞緩和施策に取り組んだが、効果は表れなかったという。
オープン以降は、交通誘導員を増員するなど新たな対策を講じていたというが、けやき通り渋滞が立体駐車場内での混雑にもつながっているため、交差点の改良工事に合わせ、駐車場内に渋滞予測AIシステムを導入することとした。
入出庫時間表示サービスは、AI画像解析で立体駐車場の出庫時間予測を可視化して、混雑を分散させる大型商業施設向けに開発されたシステムを利用している。約40台のAI搭載カメラ「TRASCOPE-AI」が駐車場内で渋滞する車両台数を計測し、撮影した静止画を5分に1回の頻度でクラウドにアップして、走行時間や周辺の道路状況をAIが解析することで、出庫所要時間を算出する。
AIによって導き出された立体駐車場内の状況は、館内16面のサイネージに、現在時間や30分後、1時間後、2時間後のそれぞれの出庫時間予測を表示。混雑状況を可視化することで、来館者に出庫時間を自ら判断する機会を与え、混雑のピークタイムを分散化することが期待されている。
また、テラスモール松戸のHPにも掲載することで、館内からの出庫だけでなく、来館者が入庫タイミングをあえてズラし、混雑が緩和することも見込んでいる。
施設を運営する住商アーバン開発では、今回の入出庫時間表示に先行して、2020年10月末に完工した小金消防署入口の改良工事で、けやき通りの渋滞が緩和されており、今回のサービス開始により立体駐車場からの出庫がスムーズになることで、開業以来の渋滞イメージが払拭されるとしている。
テラスモール松戸は、2017年で閉業した「北部市場」の跡地に、2019年10月に出店した全177店舗からなる大型ショッピングモール。周辺エリア唯一のシネマコンプレックス「ユナイテッド・シネマ」、総合フィットネス「東急スポーツオアシス松戸」、食品スーパー「サミットストア」を核に、ファッション店舗、ライフスタイルショップや地元の人気飲食店の他、イベントスペースや聖徳大学と共同開発したキッズスペースなども常設している。
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