力触覚を再現した遠隔での左官作業を実現、大林組と慶応大:遠隔操作
大林組は、慶應義塾大学 グローバルリサーチインスティテュートハプティクス研究センター 大西公平特任教授が発明した現実の物体や周辺環境との接触情報を双方向で伝送し、力触覚を再現する技術を用いて、遠隔での左官作業を可能にする新システムを構築した。
大林組と慶應義塾大学 グローバルリサーチインスティテュートハプティクス研究センターは共同で、力触覚を再現する技術「リアルハプティクス」を左官作業に適用した建設技能作業の再現システムを2021年3月に開発し、実用化に向けた検証を進めている。
システムを導入することで、左官作業での手の動きや力、触れた物の硬さや柔らかさといった感覚を遠隔にいる操作者の手元で再現し、現場から離れた場所からの無人化作業が可能になる。
厚さ1ミリ以下の精度でコテの動きを再現
両者が開発した背景には、建設現場で建設機械の遠隔作業や自動化・自律化が積極的に推進されており、とくにAIの画像認識などは人の視覚に代わる機能として活用されていることがある。一方で、建設作業ではモルタルの硬さや重さをコテで感じながら建築物に塗る左官作業など、視覚に加えて力と位置変化に関する感覚“力触覚”用いる作業も多く、今後の遠隔作業や自動化・自律化の開発を考慮すると、力触覚を再現することが重要な要素の一つとみている。
研究グループは、これまでもリアルハプティクスを油圧駆動の建機に適用するなど、建設現場における力触覚の活用に向けた実証を行っている。今回は新たに、視覚情報と力触覚情報を用い、左官作業の遠隔化実現に向けて、建設技能作業再現システムを開発した。
システムは、人が操作するコテを模したハンドル装置(マスター)と、現地で動作するコテを設置したAvatarロボット(スレーブ)で構成。マスター側は、スレーブから送信された映像を視覚で確認しつつ、ハンドル部分でコテの力触覚が伝わるため、実際に壁にコテを当てたかのような感触を感じながら作業ができる。
スレーブ側では、離れた場所にいる職人が仕上がり状況をモニターで確認しながら動かすハンドルの角度や力の入れ具合をリアルタイムに再現して、ロボットアームが作業を行う。
実証では、細かい表面の仕上がり状況といった職人が必要とする視覚情報を取得するとともに、力触覚の伝達として厚さ1ミリ以下の精度でコテの動きを再現し、微細な調整も可能にしたことで、通常の左官作業と同等の仕上げ結果が得られた。次の段階としては、数百キロ離れた遠隔地での再現作業を予定しているという。
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