ロボット犬で建設現場を遠隔巡視、大成建設が首都圏の現場に導入:現場管理
大成建設は、Unitree Robotics製の電動四足歩行ロボット2種類を遠隔で操作し、建設現場を巡回監視する現場管理システムの実用化に成功した。
大成建設は2021年5月17日、TechShareと共同で、建設現場での品質や安全の確認などを遠隔で行えるシステム「T-iRemote Inspection」を開発したと発表した。既にシステムを搭載した四足歩行ロボットを首都圏の実現場に導入し、実用性を確認している。ロボットはUnitree Robotics製で、安価かつコンパクトながら優れた運動性能を備え、日々変化する現場環境に柔軟に対応するため、現場管理の効率化が見込まれる。
優れた運動性能を備えたロボット活用で、現場管理を効率化
建設業界では、就労者数の減少や高齢化による労働力不足、長時間にわたる労働環境の改善が命題とされるなか、ロボットなどのICTを活用して労働生産性の向上を図り、働き方改革を推進することが、業界全体の急務となっている。
こうした状況にあって大成建設は、現場巡視業務をロボットにより効率化する取り組みを始めた。建設現場では、建築物ごとに条件が異なる「単品受注」で施工が進捗するため、ロボットが人に代わり現場を巡視するには、日々変化する現場環境で専門的な知識を持たない操作員でも、容易に操縦できるような仕組みが必要とされる。
そこで、ロボットによる遠隔巡視を実現すべく、遠隔操作、映像、双方向音声通話などの複数機能を備えた現場管理システムとしてT-iRemote Inspectionの実用化を目指した。システムを搭載した四足歩行ロボットを用いることで、現場内での検査や安全確認などの巡視を行うことが可能となる。
T-iRemote Inspectionと、メッシュWi-Fi及び位置把握ソリューションを一体化することで位置情報や映像などを一元的に見える化する2021年3月に大成建設が開発したプラットフォーム「T-BasisX」を連携させれば、携帯電話回線が使えない地下階や高層階でもロボットが安全に歩行しながら、360度カメラでの映像記録、定点写真撮影や工程進捗の管理など、遠隔巡視の現場管理でさらなる活用の幅が広がる。
また、2020年7月に発表した現場管理システム「T-iDigital Field」とも連携させることで、工事関係者が「いつでも」「どこでも」「すぐに」施工状況を共有できるようにもなる。
ロボットは用途別に合わせた高さ370ミリの小型タイプ「Unitree A1」とワンサイズ大きくA1よりも1.5倍の段差乗り越え能力を有する「AlienGo」の2種類を採用。本体には、さまざまな外部接続用インタフェースが搭載され、公開済み開発プラットフォームの利用により、現場の条件に応じた自由な機能追加や改良が可能となっている。
例えば、現場内全体を俯瞰できる360度カメラと詳細部を拡大確認できるズームカメラを装備することで、遠隔地からでも現場内を自由な視点で確認。また、現場内の騒音環境下でも会話可能な音声通話機能を用いれば、現場作業員とリアルタイムなコミュニケーションが図れ、将来は本社や支店から遠隔巡視が行えるようになる。
T-iRemote Inspectionの用途は、施工中の現場管理だけでなく、施工後のビル管理、病院や介護施設の定常的な巡回・警備、老朽化施設など危険エリアへの立ち入りなど、維持管理段階での業務への応用も想定されている。
今後の方針では、自動開閉扉やエレベーターとロボットを連動させ、異なる部屋やフロア間を自由に往来できるようにするなど、適用エリアの拡大を図っていく。また、施工から竣工、維持管理を含めた建物のライフサイクルに関わる統合管理システム「LifeCycleOS」の一部としても連携できるように、安全性や可用性の向上に加え、各機能の改良も検討する。
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