【最終回】日本のBIM先駆者が遺す「BIMの先にしか実現しないDXという未来」:BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(16)(3/3 ページ)
2020年の3月23日にこの連載が始まって、1年が経つ。第1回で、「なぜ日本のBIMはダメなのか?」というテーマでスタートし、今回の連載で16回目となる。この1年の節目で、一旦筆を置かせていただくことにする。第1回で、「なぜ日本のBIMはだめなのか?」と書いたのは、単にダメなことを指摘するということではなく、逆に、BIMを正しく認識し、本来あるべき道に進んで欲しいと願ったからである。この連載を書いた2020年という1年間で、国土交通省の建築BIM推進会議との連携事業や日本初のISO 19650-1,2の認証などに取り組み、その中で私なりのBIMのあるべき姿を実践できた。最終回では、前回書き残した連携事業での維持管理領域での取り組みと、BIMの先にある“DX”という未来について書いておく。
我々は何をなすべきか?
では、我々は何をなすべきなのだろうか?まずは、既存の業務をBIMに移行するところから始めるべきである。
例えば、意匠設計でも、設計業務を完全にBIMに移行できていることが必要になるが、まだまだ多くの企業が2次元CADから脱皮できず、後追いBIMを行っている状況だと思う。
今年(2021年)の2月に、『Autodesk Revit公式トレーニングガイド 第2版』をダイスネクストの石川達也氏と共著で出版した。同書は、「意匠の実施設計をRevitで実践できる」ために執筆した。BooT.oneに対応とさせていただいたのは、より実践的な活用を目指したためである。可能であれば、設備や構造編などもそろえてゆきたい。
日本では、各社が個別にRevitのテンプレートやファミリを作り、運用しているような状況にあるが、いつか各社が共通のテンプレートやファミリで業務ができるようにならなければならないと考えている。その上で、ISO 19650の情報マネジメントプロセスや情報セキュリティといったものが、我々のBIMの中で適応されてゆく。これが、BIM レベル2の実現である。
このように、段階的にBIMの成熟度を高めてゆくことが我々には必要で、これしかDXによる輝かしい未来は見えてこないだろう。
連載の最後に――
日本のBIMは、世界のレベルと比べて遅れているのは明らかだ。大和ハウス工業が日本初で認証を取得したISO 19650が、世界では、ヨーロッパはもとより、中国やインドなど、既に400件も取られているという事実からも疑いようがない。
しかし、日本の建設業界がBIMについての正しい認識を持ち、一丸となって、プロセス改革に突き進めば、きっとこの遅れは取り戻せると信じ、この連載を書かせていただいた。これは現時点での思考なので、今後、私自身も進化してゆくことで、考えが変遷してゆくかもしれないことをご理解いただきたい。
末筆ながら、本連載が、少しでも日本のBIMの未来に役立つことができているとしたら本望である。
著者Profile
伊藤 久晴/Hisaharu Ito
大和ハウス工業 技術統括本部 建設デジタル推進部(旧・BIM推進部) シニアマネージャー(2020年9月現在)。2006年にオートデスクのセミナーでRevitの紹介をし、2007年RUG(Revit User Group Japan)の初代会長となって以来、BIMに目覚める。2011年RUG会長を辞して、大和ハウス工業内でBIMの啓蒙・普及に努め、“全社BIM移行”を進めている。「BIMはツールではなく、プロセスであり、建設業界に革命を起こすもの」が持論。
近著に「Autodesk Revit公式トレーニングガイド」(2014/日経BP)。
★連載バックナンバー:
『BIMで建設業界に革命を!〜10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ』
■第15回:BIM導入のメリットを検証する「大和ハウスグループチームの連携事業」Vol.3
■第14回:BIM導入のメリットを検証する「大和ハウスグループチームの連携事業」Vol.2
■第13回:BIM導入のメリットを検証する「大和ハウスグループチームの連携事業」Vol.1
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