水路構造物の劣化状況確認に有効なシステム、従来方法と比べ作業効率が最大50%アップ:製品動向
三井住友建設は、水路トンネルなどの調査と点検作業で役立つひび割れの展開図を作成するシステムを開発し、同社のR&Dセンターで効果を検証して有効性を確認した。
三井住友建設は、MR(Mixed Reality、複合現実)デバイスにより、水路トンネルなどの調査と点検作業で役立つひび割れの展開図を作成するシステム「MOLE-FCM(Field Crack Mapping)」を開発したことを2021年1月18日に発表した。
ひび割れ箇所にチョークなどでマーキングしても撮影に影響無し
MOLE-FCMは、MRデバイスを使用し調査対象の水路壁面を動画で撮影する現地作業と、事務所で撮影動画からひび割れや不具合を検出し、形状と位置をデータベースに登録する業務からひび割れ展開図を作る。
現地作業では、事前に作成した点検対象物の格子メッシュ3DデータをMRデバイスの画面上に投影した状態で壁面をMRデバイスで撮る。格子メッシュ3Dデータにより位置が特定されるため、ひび割れや変状のスケッチ作業、これらに付随する距離やひび割れ検尺の計測は必要なく、ひび割れ箇所にチョークなどでマーキングしても撮影に影響しない。調査・点検対象物にもよるが、従来の作業方法と比較して効率が30〜50%上がる。
事務所でのデータベース登録作業では、三井住友建設が独自開発した専用ソフトに現地で取得したデータを取り込み、ひび割れや不具合を自動で検出し、その形状と位置の情報をデータベースに入力する。登録されたデータは展開図に自動変換することができ、過去の登録データと比べられ、対象物の劣化状況を確認するのに使える。
三井住友建設は、新システムの効果を確かめるために、千葉県流山市に位置する同社のR&D センターで実証試験を行った。結果、MOLE-FCMは、断水期間が限定される水路トンネルなどの調査と点検時間を短縮して作業の生産性向上を実現するとともに、高精度な展開図を生成することで、ひび割れの進展を確かめられることも判明した。
今後、同社は、導水路トンネル調査・点検システム「MOLE-FMR」とMOLE-FCMを組み合わせることで、水路構造物のリサーチやメンテナンス、維持管理のサービスを提供していく方針だ。MOLE-FMRとは、同社が独自開発したトンネル補修工事データベース「ジェネシスLTR」にインプットされた履歴情報を3Dモデルに自動生成するソフトとゴーグル型のMRデバイスを活用して、補修履歴や調査・点検記録の3D画像をMRデバイスの画面上に表示させて、リアルタイムに現状と比較できるトンネル・メンテナンス・ナビゲーションシステム。
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