感染防止で外気を取り入れつつ騒音も低減する“給気スリット”、清水建設
清水建設は、スリットに吸音と共鳴の機能を組み込み、遮音性能を備えた自然換気用の給気ユニット「しずかスリット」を開発した。
清水建設は2021年2月、建物の感染症対策や省エネで有効な自然換気用の外気吸い込み口として、室内に外気を取り入れても騒音が入ってこない新たな給気スリット「しずかスリット」を実用化したと明らかにした。ビル用設備機器メーカーのオイレスECOがユニットを製作し、当面は清水建設へ独占的に供給した後、外販も予定している。
外気を取り入れた感染症対策で、騒音を防ぐ
近年は、新型コロナ感染症対策やZEB化の有効な手段として、自然換気設備を採用する建物が増えている。通常は建物の外壁に外気を室内に取り入れる給気用スリットを設けるが、交通騒音などが外気とともに侵入し、室内の音環境を悪化させていた。このため、自然換気設備を導入しても、スリットを閉鎖している建物は少なくない。
そこで清水建設は、スリットに吸音・共鳴機能を組み込んで、外気の取り入れには解放し、騒音防止には閉鎖と相反させることで課題を解消した。
しずかスリットの断面形状は、従来の自然換気用給気スリットと同様にL字型で、スリット幅は30ミリ。スリット下端から入ってくる外気は、スリット片側に組み込んだ吸音材を通り、次にスリット両側に組み込んだ共鳴器、開閉装置部を経て室内に至る。吸音材は、耐候性と耐水性に優れた不燃性ポリエステル繊維で、騒音のうち主に中高周波域の騒音を吸収する。共鳴器は、吸音材で吸収しきれない中低周波域の騒音を低減。共鳴器は、スリットに面した開口と開口に続く容器(空洞)で構成され、容器内の空気がバネの役割を果たして騒音を遮断する。開口幅と容器の容量を調整することで、低減したい騒音の周波数に応じてカスタマイズすることができる。
清水建設では実証実験の結果、屋外の幹線道路や鉄道から給気スリットを介して室内に入ってくる騒音のうち、中心となる500〜2000ヘルツ(Hz)の騒音について、5〜9デシベル(dB)低減できることを確認した。騒音のエネルギー量に換算すると3分の1〜8分の1以下で、明らかに騒音が低減されたことが体感できるレベルだという。
実験を受け、既にしずかスリットは大規模オフィス2件の設計提案に採用されている。今後は、さまざまな用途の建物に対して、しずかスリットの導入を進めていくとともに、カーテンウォール一体型のユニットの開発を進めていく。
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