「日常の延長線上にある防災」積水ハウスが示す、自然災害の時代を生き抜くヒント:第5回 住宅・ビル・施設 Week(3/3 ページ)
現在、住宅の堅牢性に関する技術は、台風や地震などで簡単には倒壊しないレベルに到達している。しかし、災害の発生そのものを止めることはできない。防災・減災で重要なのは、日常の生活の中で常に災害を意識して準備を怠らないことだ。
「知っている」だけでも「防災」、暮らしの中に「防災」を取り入れていく
東田氏は、毎日の暮らしの中に「防災」を入れていくことが大切とし、まず知らなければ備えられないので、まず知ることが先決と語る。
一例として、オレンジフラッグや赤白格子の津波フラッグを知る人は少ないという。オレンジフラッグの方は日本財団が数年前に始めたもので、津波が来そうな時にライフセーバーなどによってオレンジ色の旗が振られる。だが、旗の意味を知らないと津波から逃げ遅れてしまう。同様に、津波避難ビルや津波避難施設を示す看板(サイン)を理解していないとスムーズな避難が実現しない。「海の近くに遊びに行った際などに、こういった看板や防災施設を一つ見つけることも防災につながる」(東田氏)。
東田氏からは、災害に遭遇した際に、家族が待ち合わせる場所をピンポイントで決めておくことも不可欠と訴えた。災害の際は、学校や公園などの避難場所に大勢の人が押し寄せる。そのため、「時計台の下」や「鉄棒の横」などと特定の場所をあらかじめ取り決めておくのがベストとする。
この他、講演では室内で家具を固定する重要性、安全な配置、食料の備蓄法などにも具体例が紹介された。
東田氏は、「日常生活と防災を結び付け、「○○と防災」という切り口を持つと防災に対する意識が広がる。例えば、「キャンプと防災」や「ペットと防災」といった具合だ。キャンプ用品は、被災時の生活に役立つことが多い。一方、被災時にペットをどうするかは、「ペットと防災」を日常的に考えておかないと、いざというときには思い至らないだろう。
この他、「○○と防災」としては、「旅行と防災」や「歯磨きと防災」も想定される。旅行に使うスーツケースを防災用品の収納に使えば、必要なものが一つにまとめられ、収納スペース面でも無駄がない。
歯磨きは、断水して飲料水が不足した時の困りごとでもある。歯磨きをしなかったことが原因で口の雑菌が肺に入り、最悪のケースでは肺炎になることもあるとされる。しかし、ペーパー歯磨きや液体歯磨き、歯磨きガムなどが用意されていれば、被災時の断水下にあっても口の中の雑菌を取り覗ける。東田氏は、今回の講演を「○○探し」のヒントにして欲しいと要望し、講演を終えた。
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