オフィス就業者の働き方に寄り添う日立のスマホアプリ、基盤の「spaceOS」創業者らが可能性を語る:Hitachi Social Innovation Forum 2020 TOKYO ONLINE(4/4 ページ)
日立製作所は、オフィスで働く人がビル内の会議室やレストランの施設予約や各種情報の入手、就業者間のコミュニティー活動、非接触での入退室などをスマホアプリで一元的に行えるサービスプラットフォームを開発した。既に日立グループ内でのPoC(Proof of Concept:概念実証)を開始しており、日立のIoTプラットフォーム「Lumada」のビル分野での新ソリューションとして提供開始に向けた準備を進めている。
不動産に柔軟性と融通性を加えるspaceOS
spaceOS上では、スマホをあたかもリモコンのようにして、専用アプリ上で入退室管理やエレベーター操作、空調制御などが行える。ファシリティマネジメントやプロパティマネジメントへの機能拡充も図り、働く人にとって快適なオフィス運営をさまざまな面で支援するアプリが実装されている。
「当社は、日常のオフィスで、煩わしいと思う行動をいかに簡素化するかに尽力している。一例としては、同僚へのチャット連絡、(社内で)特定のスキルを保有する人材のピックアップ、ランチの購入、デスクや会議室の予約などの機能がある。どのようなビルであっても、spaceOSがモジュール化したソリューションの特徴を持っているため、企業やオフィスに合った最適な機能を選択して使える。コロナ禍で世界的にオフィス需要は微減しているが、供給は増えており、とくに短期リースのニーズは爆発的に高まっている。spaceOSは、こうした市場の多様性に応えられ、オフィスを人間中心の空間に変え、ビルなどの不動産自体にも柔軟性と融通性を付与できる」(マルコフスキー氏)。
これからのニューノーマル時代への対応については、「エレベーターやフードサービスとの連携で非接触の他にも、働く場所の確保といったキャパシティーマネジメント、空調設備との組み合わせで感染症から守り、オフィスの安全性を保つといった活用が想定される。その先には、欧州で課題となっているオフィスの売買・賃貸の仲介などといったリースマネジメントにも、spaceOSで解決できるように機能強化を図っていく」と開発ビジョンを語った。
最後に司会の日立製作所 赤津昌幸氏は、「コロナ禍でオフィスワーカーを取り巻く環境は、何倍もの速度で変化し、オフィスの在り方やスマート化も進んでいる。日立では、パートナー企業とともに、本ソリューションによって就業者それぞれに寄り添うサービスを提供し、新たな社会価値の創出を行っていきたい」と述べ、閉会のあいさつに代えた。
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