プラント設計を効率化する点群と3DCADの融合、VR機能で合意形成やプレゼンも:Autodesk University 2020(3/3 ページ)
高精度の3Dレーザースキャナーが建築の現場を大きく変えつつある。レーザースキャンによって得られる点群データは、現場の状況を忠実に表す。点群データがあれば、現場全体を3Dモデル化することもでき、仕様や設計の変更などに際してもスピーディな対応が可能となる。しかし、そのためには少なからぬコストと労力が必要になる。ジェイコフでは、現場でスキャンした点群データと3DCADによる3Dモデルを融合させ、事前の打ち合わせやプレゼンテーションなどの効率化を実現している。
プレゼンテーションや認識共有に向けたツールとしての利用
砂村氏は、3Dモデルと点群データを情報共有に用いる手法も解説した。3次元の情報を簡単に見られる3D PDFを使うと、打ち合わせや協議の場での効率化がもたらされる。3D PDFは、無料のソフトさえインストールすれば、ほとんどのPCで表示できる。また、データのサイズが小さくて済むので、メールにも添付しやすい。
この他、3Dモデルレビューソフトウェア「Navisworks」やInfiPoints、3Dビジュアライゼーションソフト「VRED」などを使ったプレゼンテーション例を紹介した。
Navisworksには、点群データや3Dモデルなど多種多様なデータを読み込み、モデル内を移動できるウォークスルー機能が備わっている。また、InfiPointsにはVR機能があり、より現実に近い仮想空間のイメージで現場確認が行える。
ちなみにInfiPointsでは、複数の計画モデルを登録することに対応している。これによって、提案内容を切り替えながら、比較しつつVR体験が可能となる。狭い場所や複雑な箇所は、3D画面よりもVRの方が分かりやすいという利点がある。
VREDは、レイトレーシングを利用し、非常に美しい表現が可能な3Dビジュアライゼーションソフト。VR機能もある他、モデルのクリックで扉を開閉するなど、動作を検証することにも応じている。
ジェイコフでは、VREDを導入してまだ日が浅い。砂村氏は、VREDの検証機能とVR機能を組み合わせ、「現実に近い形で、プラントの多様な動作確認までをできるように試行錯誤していく」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(13):BIM導入のメリットを検証する「大和ハウスグループチームの連携事業」Vol.1
2020年に国交省が公募した「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」とは、策定された「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)」(2020年3月)に沿って、設計・施工などのプロセスを横断してBIMを活用する建築プロジェクトで、BIM導入の効果検証や課題分析などを試行的に行う施策である。当社は、モデル事業に選ばれなかったが、連携事業として子会社のフジタとともに、設計〜施工〜維持管理で、プロセスを横断してデータを一気通貫での活用に取り組んだ。仮想の建物ではあったが、BIMの活用において、当社のBIMの取り組みを最大限に発揮する絶好の機会となった。今回は、大和ハウス工業の連携事業について、先般開催した報告会の発表よりも、少し詳しい説明を加える。 - Autodesk University 2020:歴史的建造物の調査を高精度に行う“クイックスキャン”、Revit連携でVR展開も
文化財保護法が一部改正され、以前は政府が行っていた歴史的建造物の管理が都道府県や市町村に委ねられることになった。実現には、歴史的建造物に関する管理や活用を市民参加型にする必要がある。レーザースキャナーや写真データを活用した歴史的建造物のデータ化は、将来的な建造物の修繕やバリアフリー化などの情報を共有化するのに有効だ。また、BIMとの連携で、調査や修繕の管理・立案などにも役立つ。 - BIM:トラスが大和ハウス工業に建材選定・管理システムを導入、BIMに連携するツールも開発
トラスは、大和ハウス工業と共同で、クラウド建材選定・管理システム「truss」とAutodesk製BIMソフト「Revit」などと連携できるツールを開発した。 - BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(12):【第12回】「設計BIM全社移行を実現する社内教育の秘訣!Webインターンシップ」
BIMの社内教育について、大和ハウス工場の「BIM啓蒙期」と「BIM導入期」の取り組みを紹介した。今回は、番外編として、2020年に実施した“BIMインターンシップ”について説明する。BIMインターンシップは以前にも触れたが、今年は新型コロナウイルスの影響で、学生の皆さんに当社に来ていただくことができないため、中止も考えた。しかし、当社のBIMを学生に知ってもらう良い機会となるので、何とか実施したいとの思いで、Microsoft Teamsを使用したWebインターンシップとして開催した。Webインターンシップは、参加した学生の方々に好評だったので、その内容を紹介したい。 - BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(11):【第11回】「設計BIM全社移行を実現する社内教育の秘訣」(BIM導入期編)
前回は、「BIM啓蒙期」での社内教育について説明した。BIM啓蒙期は、種々の工夫を凝らし、BIMにいかに興味を持ってもらい、少しでも社内でのBIM活用を促し、業務移行のための実施検証を行うべく奔走した過渡期だった。しかし、2017年からの“全社BIM移行”の決定を受けて、本格的な「BIM導入期」に移ることになる。「BIM導入期」では、まず設計のBIM移行を進めた。2次元CADの文化を捨て、BIMに完全移行するためには、担当者だけでなく、管理職や派遣社員・協力会社まで、縦横に徹底して教育することで、やっと設計の完全移行が見えてきた。今回は、この「BIM導入期」における社内教育がどのようなものであったかを紹介し、BIM移行というものは何か、その本質を追究していく。