パナソニックらが舞台を見やすい劇場の建設を支援する評価手法を開発:パナソニックが考える「2020以降の街づくり」(2/2 ページ)
パナソニックは、ラムサと東京都市大学 教授 勝又英明氏とともに、劇場建設の企画構想から改修までで、舞台の視認性を確かめるのに役立つ評価手法「View-esT」を開発した。
劇場や舞台の3Dモデルを作成可能
一体感および親密性の計測、数値化、評価プログラムは、抽象的で理解しにくい一体感と親密性を数値化する。
西氏は、「一体感とは、他の観客が視界に入ることで、感じられるものだと推定し、一体感の計測、数値化、評価プログラムでは、劇場の半球型3Dモデルに、座席や観客、舞台の3Dモデルを設置したものを活用し、各座席で観客が視野に入るかを調べられるようにしている。親密性は一体感の数値を客席数で割り算出する。コロナ禍では、密集の回避が求められているが、親密性の高さは観客同士の距離と関係ないため、今回のプログラムで、各来場者の間隔を保ったまま、親密性を増せる」と述べた。
照明配置評価プログラムは、照明の対象と光源の位置を立体的に計算し、劇場の半球型3Dモデルで評する。
「従来の劇場設計では、光源位置の評価は、施設の平面図や断面図、文献などを参考に決定していたが、パターン化された照明の配置では、現代の演出や照明、映像に関するデザイナーの要望に応えられなかった。しかし、照明配置評価プログラムは、多面的に劇場のライティングを検討可能なため、さまざまなデザイナーのニーズを満たせる」(西氏)。
劇場など計画支援VRシステムは、見え方総合評価プログラムなど各プログラムで取得したデータに基づき、劇場やホール、アリーナを3Dデータで可視化する。3Dデータ上では、自由な視点の移動や内装と外観の確認が行える他、指定した座席からの見え方や周辺に座る観客の身長による視野の変化、手すりの位置をチェックできる。
パナソニック LS社の松尾氏は、「劇場など計画支援VRシステムで作成した3Dデータは、劇場の利用者がスマートフォンとPCで座席を予約する際に舞台の見え方を確かめられるツールとしても活用する見通しだ」とコメントした。
View-esTのターゲットは、全国で約3000施設ある劇場のうち、有料のイベントが開かれる大型劇場の約600施設。パナソニック ライフソリューションズ(LS)社は、大型劇場が約30年ごとに改修や新築されている現状を考慮し、1年間あたり20件の大型ホールでView-esTの導入を目指す。全国で2万件を超えるスポーツ施設の中で、有料のイベントが行われる約600施設にもView-esTを訴求する。
今後の展開について、パナソニック LS社の松尾氏は、「View-esTは当面、資産価値と利便性の向上を支援するツールとして機能させ、その後、劇場のブランディングと施設のDXを促進するソリューションとして使用の機会を増やす予定だ」と明かした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 新築戸建て住宅向けに20年間電気代無料のサービスを提供開始、エネファント
エネファントはこのほど、地方への定住・移住促進事業として、新築戸建て住宅向けに、20年間電気代無料のサービス「フリエネ」の提供を開始した。 - パナソニック LS社が人の密集を可視化するシステムを開発、濃厚接触者の追跡に貢献
パナソニック ライフソリューションズ社は、建物内の人が密集するエリアを可視化する屋内位置情報システムを開発した。屋内位置情報システムは、既にリリースしている監視カメラシステムや入退室管理システム「eX-SG」と組み合わせて使用することで、社内で感染者が出た時に濃厚接触者を追跡することができる。 - 街の今がスマホで分かる、綱島SSTの「3Dまちづくりプラットフォーム」が機能拡張
次世代都市型スマートシティー「綱島SST」で、大林組が提供している街のデジタルツインを実現する“3Dまちづくりプラットフォーム”が機能拡張した。スマホで誰でも、道路の混雑状況や熱中症の危険度など、街の今がその場で分かるようになり、生活の利便性向上につながるとしている。 - パナソニックが全自動掃除トイレの2機種を改良、非接触で用足しから手洗いまで可能に
パナソニックは、全自動掃除トイレ「アラウーノ」のL150シリーズとS160シリーズを非接触で用足しから手洗いまで行えるように改良し、リニューアル発売することを2020年11月5日に発表した。 - 施設内の密回避を可視化する「安心ゲート」の実証実験が小田急新宿で開始
パナソニックは、商業施設の来店客が密を回避しながら移動ができる「安心ゲートソリューション」を開発した。 - パナソニック 建築システムBUが非住宅市場に本格参入、第1弾は0.7キロの不燃天井材
パナソニックは、0.7キロの重さで、ネジ2本により鋼製下地に固着できる不燃軽量天井材「エアリライト」を開発した。 - パナソニック LS社が電源用配線の増設工事が不要なIoT配線器具を開発
パナソニック ライフソリューションズ社は、シティーホテル向けの配線器具「SO-STYLE」に戸建て物件や中高級ホテルを対象とした144品番を加えた。また、スマートフォンで家の中に設置された照明を操作可能な配線器具「アドバンスシリーズシリーズ リンクモデル」も改良し、既築物件にも導入しやすくした「アドバンスシリーズ リンクプラス」を開発した。 - 道路灯の代わりに使えるまぶしくないエクステリア照明「Broad Washer」
パナソニック ライフソリューションズ社は、まぶしくないエクステリア照明「Cylinder Spot」と「Broad Washer」を開発した。Cylinder Spotは、光源遮光角が45度なため光源が見えづらく、内部に黒色コーン“ブラックコーン”や鏡面反射板を設けることで、照度を抑えている。Broad Washerは、表面に設けたマイクロレンズにより、まぶしさの原因になる上方への漏れ光を下方に運び、発光輝度を抑制しているが、路面を照らす能力が高いため、道路灯の代わりに使える。