ニュース
震度7の震動を30分の1に軽減する断震システムとポリウレア樹脂による部材強化の効果:住宅ビジネスフェア2020(2/2 ページ)
東京理科大学 教授 高橋治氏は、ポリウレア樹脂を塗布したコンクリートとアラミド繊維を素材にした帯を装着したコンクリートの性能を実験で検証した。結果、通常のコンクリートと比較して、ポリウレア樹脂を塗布したコンクリートは耐力が約12キロニュートン上がり、アラミド帯を取り付けたコンクリートは耐力が約2.5キロニュートン向上することが判明した。
耐力が約12キロニュートンアップ
高橋氏は、セミナー後半で、ポリウレア樹脂を用いた部材の強度向上について言及した。
ポリウレア樹脂は、高強度・高伸縮で、耐衝撃性や防水性、耐摩耗性に優れる素材で、対象物の強度を高めるの役立つ。
高橋氏の研究室では、通常のコンクリートやポリウレア樹脂を塗布したコンクリート、幅45ミリの黒いアラミド帯を装着したコンクリート、幅15ミリの青いアラミド帯を搭載したコンクリートの強度を比較する実験を行った。アラミド帯とは引っ張り破断耐力が2.5トンのアラミド繊維を素材に使用した帯を指す。
実験では、ポリウレア樹脂を塗布したコンクリートに幅15ミリの青いアラミド帯を取り付けたものと、ポリウレア樹脂を吹き付けたコンクリートに幅45ミリの黒いアラミド帯を装着したものの性能も検証した。
結果について、高橋氏は、「通常のコンクリートと比較して、ポリウレア樹脂を塗布したコンクリートは耐力が約12キロニュートンアップし、アラミド帯を取り付けたコンクリートは耐力が約2.5キロニュートン向上して、両補強を施したコンクリートは耐力が約15〜16キロニュートン上がった。しかし、いずれの加工をコンクリートに行っても、剛性の上昇は見られなかった」と述べた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- “南海トラフ地震”に備え免震建物2方向の揺れを計測、横浜市庁舎に導入
竹中工務店は、地震時に免震建物の動きを計測する「直立型変位計」を開発し、同社の新社員教育寮と横浜市役所新庁舎に適用した。 - 地震時に建物の崩落リスクを低減するダイワハウスの耐震吊り天井「Dタフ天井」
政府の中央防災会議で検討された南海トラフ地震の被害想定は、静岡県から宮崎県にかけて一部で震度7となる可能性があり、両県に隣接する周辺地域では震度6強から6弱の強い揺れになるとしている。南海トラフ地震の対策として、大和ハウス工業は、地震時に建物崩落を防ぐ耐震吊(つ)り天井「Dタフ天井」を開発した。2020年6月9日には、Dタフ天井の特定天井タイプで、日本建築総合試験所の建築技術性能証明を取得した。 - 三井住友建設が多層階での揺れを一括して制御する新システムを開発
三井住友建設はこのほど、地震後にも継続的に使える構造物の実現を目指し、建物に対する地震の影響を最小化する「揺動制震システム」を開発した。 - 大地震時に石垣の崩壊を防ぐ新補強材を開発、耐震性能は従来品の1.25倍
大林組は、大規模地震が発生した時に、伝統的建造物である城郭に配置された石垣の崩壊を防ぐ部材の開発を進めている。 - AIを用いてAMDによる制震を最適化、大林組らが新手法を開発
搭載された重りを能動的に動かすことで対象構造物の振動を低減する装置「アクティブ・マスダンパー(AMD)」を効果的に機能させる新手法が誕生した。大林組とLaboro.AIが共同で開発したAIを用いた手法がそれだ。地震による建物の揺れを効率的に抑えられるテクノロジーとして業界で関心を集めている。 - 業界初、建物における音響・振動解析の新計算手法を実用化
大成建設は、鉄筋コンクリート造の音響や振動を効率的に解析する計算手法の実用化を発表した。従来より予測時間が半減し、複雑な形状の建物でも音響・振動を高精度に予測が可能で、業界では初めての試みとなるという。 - 木造住宅倒壊解析ソフト「wallstat」で、耐震等級の効果や制震性能を“見える化”
木造住宅の耐震性能を評価する場合、これまで、国内最大級の実験施設「実大三次元震動破壊実験施設(E−ディフェンス)」などの振動台で、実証試験を行わなければ、崩壊のメカニズムの分析が困難だった。そのため大規模な施設を使用する手間や多額の利用料により、多くの企業が、容易に検証に踏み切れなかった。この状況を2010年にリリースされたPC上で木造家屋の3Dモデルに地震のシミュレーションが行えるソフト「wallstat」が打破した。wallstatは現在、耐震等級の効き目や耐震性能などの“見える化”といった新たな活路を示している。