業界初、建物における音響・振動解析の新計算手法を実用化:FM
大成建設は、鉄筋コンクリート造の音響や振動を効率的に解析する計算手法の実用化を発表した。従来より予測時間が半減し、複雑な形状の建物でも音響・振動を高精度に予測が可能で、業界では初めての試みとなるという。
大成建設は2019年10月2日、鉄筋コンクリート造の音響や振動を効率的に解析する計算手法の実用化を発表した。従来の手法と比較して予測にかかる時間が約半減し、複雑な形状の建物でも音響・振動を高精度に予測できる。今回実用化した計算手法は、大規模な地震解析などに使う「hp-有限要素法(hp-FEM)」を建物の音響・振動予測を迅速かつ高精度に行える形式に改良した。建設業では初めての実用化となるという。
これまで建物を伝わる音響や振動の予測は、梁や柱を「線状」、床を「面状」の要素(メッシュ)に置き換えてモデル化し、数値計算手法の1つである「有限要素法(FEM)」を用いて解析を行っていた。しかし、このモデルは簡易的で計算精度に限界があった。一方、躯体(くたい)形状を正確にモデル化した「立体メッシュ」を用いた場合、計算精度は高いものの、メモリ容量の増加や計算に時間を要することから、これまで建物の音響・振動を迅速に予測することは困難であった。
新手法では、従来のFEMよりメモリ容量と計算時間を約半分程度に抑えながら同等の計算精度が得られるという。さらに「立体メッシュ」を自動作成し音響や振動を高精度に予測できる。実際に集合住宅の躯体の一部に適用したところ、従来の手法では予測に数日かかったのに対し、新手法では1日程度で完了し予測時間の短縮化を確認したという。
同社は今後、自社開発した重量床衝撃音予測システム「TSounds-Floor」をはじめとする音響・振動解析に新手法を用いて、予測精度の向上を目指していく。
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