地震時に建物の崩落リスクを低減するダイワハウスの耐震吊り天井「Dタフ天井」:耐震
政府の中央防災会議で検討された南海トラフ地震の被害想定は、静岡県から宮崎県にかけて一部で震度7となる可能性があり、両県に隣接する周辺地域では震度6強から6弱の強い揺れになるとしている。南海トラフ地震の対策として、大和ハウス工業は、地震時に建物崩落を防ぐ耐震吊(つ)り天井「Dタフ天井」を開発した。2020年6月9日には、Dタフ天井の特定天井タイプで、日本建築総合試験所の建築技術性能証明を取得した。
大和ハウス工業は、地震時に建物の崩落リスクを低減する耐震吊(つ)り天井「Dタフ天井」を開発した。
特定天井タイプと地震対策タイプは従来比で最大25%のコストカットが可能
東日本大震災や熊本地震などの巨大地震では、多くの建物が、柱や梁(はり)などの構造躯体だけでなく、天井などの非構造部材でも被害を受けた。なかでも、商業施設や事務所などの建物に多く採用されている吊り天井では、クリップの離脱や部材変形などが崩落の原因となり、施設の継続的な使用が困難となるケースがあった。
そこで、大和ハウス工業は地震時の被害を抑えるために、吊り天井の崩落リスクを抑止するDタフ天井を開発した。Dタフ天井は、特定天井タイプや地震対策タイプ、落下低減タイプの3タイプを用意している。
特定天井タイプと地震対策タイプは、独自開発の専用補強金物と専用補強クリップを採用した天井。専用補強金物で天井仕上げ材と天井下地材やブレースとの接合を強化することで、地震時に天井の揺れを抑制するとともに、専用補強クリップで野縁(のぶち)が野縁受けから離脱する可能性を下げる。
耐性能は、大和ハウス工業がこれまで採用していた地震対策の天井と比較して耐震性能は、鉛直方向で約2.9倍、水平方向で1.2〜2.6倍優れている。さらに、部材数や施工負荷を削減し、従来比で最大25%のコストダウンが図れる。
また、国土交通省は、特定天井は天井と壁の隙間を最低でも6センチ空けて設置することを定めているが、Dタフ天井の特定天井タイプでは、天井と壁の隙間を最小2センチで配置することができ、地震対策タイプも、顧客のオーダーに応じて、天井と壁との隙間を変えられる。
一方で落下低減タイプは、ブレースを設置しない従来工法の天井に、専用補強クリップを付けることで、野縁と野縁受けの接合を増強して、地震時の落下リスクを軽減。従来工法の天井と比較すると、鉛直方向の耐震性能が2.3倍に向上している。3タイプ全てのDタフ天井は、加振実験で、震度7レベル相当の大地震を想定した場合でも崩壊しないことを確認した。
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